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 えみの困惑した瞳が、ちらりと教授を見ている。

「……意外だねえ。私が何とか言っておくが、いいのか? この子で」

 教授は、少し戸惑いを見せながら、俺を見ている。

「ああ。じゃあ決まりだね」

 俺は、そう言って、ちらりと腕時計を見た。

 次の約束の時間が近づいている。

 もう夕暮れ時で、この後は幼馴染たちと飲む予定だった。

 休みの日に時間に追われるなんて、俺らしすぎる。

 どうも予定がきっちり決まっていないと、落ち着かない。

 俺は、すぐそばに置いてあった黒のジャケットを取り、立ち上がった。

 ふと目の前のえみに、びっくりする。

 ほっそりとしているが、それ以上に小柄で小さかった。

 百九十センチ近い俺と比べて、四十センチ近く低い。

 確か、昨日の見合い相手の姉は、高いピンヒールを履いていたが、ここまで低くはなかった。

「君って、身長何センチ?」

「……百五十五センチです。白石さんは百九十センチ近くありますよね。モデル体型のしえ姉さんと違って低すぎる私では、一緒に連れて歩くと格好悪いのでは?」

 えみは、苦虫を噛み締めながら言ってくる。

「関係ないよ。身長なんて」

 俺は、自信なさげなえみに苦笑して、彼女の前へ立った。

 さらりと流れる綺麗な黒髪に、そっと唇を当て、細腰に手を添え、少しだけ抱き寄せた。

「!?」

 真っ赤に頬を火照らせたえみが、やけに可愛く感じる。

「それじゃあ、教授に頼んでおくから、絶対来いよ。子猫ちゃん」

 するりと通り過ぎながら、俺はえみから柔らかなコロンの匂いを感じていた。

 どうしてもえみのことが知りたくなってしまう。

 本気で教授にこの件に関して頼んでみようと、俺は考えていたーー。