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 レスキーの存在など、忘れていた。

 俺は、えみの柔らかそうな小さな唇へ、自分の唇を重ね合わせていた。

 瞬間、身体の芯まで、痺れるような感触。

 えみは、思った以上に酔ってしまいそうなくらい魅惑的すぎた。

 もっと、もっと知り尽くしたくなる。

 欲望が滾る。
 
 予測はついていたから、俺は我慢してきたのに。

 最初の口づけから、極力避けていたのに。

 えみを怖がらせないように、俺は触れたいのをずっと我慢していた。

 どうにか自分を見てくれるように、心を和ませること出来るように。

 俺らしくなく、優しく接してきたつもりなのに。

 レスキーといい、教授といい、第三者が俺の努力を壊してくれた。

「……さっきも言ったけど、俺は君を帰すつもりはない」

「え?」

 顔を上げた俺はそう言い、えみを自分の胸奥へ抱き寄せていた。

「祥を本気にさせるとはね」

「レスキーもじゃないのか? 悪いけど、えみは誰にも渡すつもりはない」

「……だろうね」

「レスキー、二人の荷物を部屋へ届けて欲しい。先に部屋へ戻る」

「わかったよ」

「祥さん、この姿のままで?」

 水着のままだったので、我に返ったえみが口を挟んできた。

「問題ない。裏手に特別な入り口がある」

「で、でも」

 俺は、もう一度えみの唇に触れたあと、彼女を連れて歩き出していたーー。