天使なのに、なぜか甘やかされています。



「……おい、(ひじり)、起きろ」

 翌日の5限目。家庭科で雑巾を手で縫っているところ、清丘(きよおか)くんの小さな掛声が聞こえてきた。

 世河(せがわ)くんは窓側から2列目の一番後ろの席(清丘(きよおか)くんの隣)で伏せ寝している。

 世河(せがわ)くん、声掛けられてるのに起きないみたい……。

 わたしはチラッと教壇に立つ女性でクールな(たまき)先生を見る。

 このままだと世河(せがわ)くんが(たまき)先生に怒られてしまう。
 世河(せがわ)くんの役に立ちたいけど、どうしたら……。

 わたしはハッとする。

 そうだ、わたしの席、世河(せがわ)くんの2人前だし、
 わたしも寝ればいいのでは!?

 わたしは早速、雑巾を机の隅に置き、伏せ寝してみる。
 すると(たまき)先生がそんなわたしに気づいたのか、スタスタと足音が近づいて来て――――、バァンッ!

 机を大きく叩く音が響いた。