天使なのに、なぜか甘やかされています。



 やがて正門を駆け抜け、
 わたしは天籠(あまかご)高校が見えなくなったところで足を止める。

 よし、ここから駅まで飛ぼう。

 そう思うも天使の力は一向に発動しない。

 ……え、両翼が出ない。

 もしかして、
 血が弱まっているから?

 だったら、なおさら、


「……家に帰らなきゃ」


 世河(せがわ)くんに2度と会えなくなる前に。


 わたしは再び駅に向かって全力で駆け出す。

 けれど、駅近くの階段を駆け上がっていく途中で体中が薄くなった。

 幸い人はおらず、その隅に座り込むと、
 カーディガンを脱いで抱き締めて泣く。


 借りたカーディガン、まだ返してないのに。