天使なのに、なぜか甘やかされています。



 そして7月11日のこと。
 一番乗りで教室に着いたので一人ぽつんと席に座っていると、ガラッと扉が開く。

白鳥(しらとり)、誕生日おめでとう」

 世河(せがわ)くんが教室の扉に右手を突きながらそう言った。
 わたしはびっくりして固まる。

「え、なんで、知って……」

「レインに表示されてたから」

 わたしはスマホでレインを開いて確認して見ると、
 初期アイコンが誕生日仕様になっていた。

 まさか、こんな機能があったなんて。

世河(せがわ)くん、ありがとう」

 わたしがお礼を言うと、世河(せがわ)くんが近づいてくる。

白鳥(しらとり)、今日の夜、空いてる?」

「うん、空いてるけど、どうして?」

 世河(せがわ)くんは隣から自分のスマホをわたしに見せる。

「え、テンランド行きのシャトルバスの予約、2人分?」

 世河(せがわ)くんは優しく微笑む。

「空いてて良かったわ」
「サプライズで予約しておいた」

 隣にいる世河(せがわ)くんは机に右手を突き、
 覗きこむように前髪が触れそうなくらいまで顔を近づけ、じっと見つめる。