天使なのに、なぜか甘やかされています。

 え、顔、見せろって……。
 まさか……。

 わたしは立ち上がり、シャッ!
 部屋のベランダのカーテンを薄くなった左手で開け、
 鍵を外し――、ガラッ。
 扉を開けてベランダに出て、下を見る。

 声が聞けただけでも、奇跡なのに、
 制服姿の世河(せがわ)くんが右耳にスマホを当てたまま、息を切らしながら見上げていた。

 ここは3階で、
 夜が近いのに空は明るく、雨も降っていないおかげで、世河(せがわ)くんの顔がちゃんと見えて、わたしは泣きそうになる。