天使なのに、なぜか甘やかされています。

激しい雨の音が廊下に響く。

 (ひじり)千煌(ちあき)が辛そうな表情をし、左手で顔を隠すのを横目で見ながら、教室に入って行った。




 それから(ひじり)千煌(ちあき)とは一度も口を聞かず、
 ふたりが羽美(うみ)を取り合っているとまで周りに噂され、
 午後になると雨が珍しく上がり、放課後。

 中庭にある藤棚の屋根が付いたベンチで横になって寝ていると、ひかりが駆けて来た。

「はぁ、やっぱり、ここにいた」
(なお)千煌(ちあき)引き止めてくれてるからさ」
「仲直りして一緒に帰ろ」

「それは無理だな」
 (ひじり)はそう言ってベンチから起き上がる。

(ひじり)、そんなこと言わずにさ! ね!」