天使なのに、なぜか甘やかされています。

 どくん、どくん、と鼓動が速くなる。

 どうしよう。
 何も言葉が出てこない。

 世河(せがわ)くんは、はー、と息を吐くと、
 布団のあることに気づく。

「あ、少しめくれてる」

 世河(せがわ)くんが直そうとするも、バッ!
 わたしは自分で布団を直し、布団をめくられないよう、ぎゅっと掴む。

「そんな強く掴まなくても、布団、取ったりしねぇよ」

 世河(せがわ)くんは寂しげな顔をし、わたしの頭をぽんとして、
 寝た状態から起き上がる。

 すると5限の終わりのチャイムが鳴った。

「ちょうどチャイムなったし、行くわ」

 世河(せがわ)くんはシューズを履いてベットから降り、
 わたしのゼッケンを持ち、保健室を出て行く。

 バレなくて良かった、と思いつつも、
 また世河(せがわ)くんに寂しげな顔をさせてしまった自分が許せなくて、
 涙が止まらなかった。