天使なのに、なぜか甘やかされています。

 わたしは校内中、世河(せがわ)くんを走って探した。
 でも姿はなく。

「はぁ、どこにもいない……」
「もうバイト行っちゃったかな……」

 わたしは諦めて、誰もいない廊下に座り込む。
 床はひんやりと冷たい。

「…………なんで」
「なんで、わたしは天使なの?」

 天使じゃなければ、
 普通の人間だったら良かった。

 そしたら消えずに、
 ずっと、世河(せがわ)くんの傍にいられるのに。

 わたしは静かに泣いた。