好きなのに、進めない。【番外編】

はぁ…。こいつは、人の話を覚えてるのか?
ズボンかジャージ履けって何度言ったら分かるんだ。

「なぁ、またか。それスカートだろって。」

「ん?ロングだから大丈夫!レギンスも履いてるからズボンみたいなもんでしょ?気にしない!気にしない!さぁ行こう!」

「お前なぁ…。ほら、手。」

「もー、うるさいの!」
それは、自分でも自覚してるけど、可愛すぎるからだろ。初詣なんて絶対知ってるやつにたくさん会うし、制服とは雰囲気が違う私服のみのりを見せたく無いし、みのりのかわいさは俺だけ分かってれば良い。
っていつの間にか、ため息をついていたようで…

「そんなに似合わない?変かな?そんなに深いため息つかれると、流石の私も心が折れそうなんだけど…。」

「怒んなって。」

「怒ってない!何笑ってんの?ムカつく。」

「じゃあ、何だよ?」

「落ち込んでるのに、馬鹿にしてる?」

「ううん。してない。やっぱり俺のみのりはかわいいなと思ってる。」

「は?俺のじゃないし。」

「そんな可愛い格好してきて、寒いくね?」

「別に。話逸らさないで。」

「ごめんごめん。可愛いから、初詣で会うかもしれない知り合いにみのりを見せたくなかっただけ。」

「…そういうの、急に言われると…。」

「照れちゃう?」

「バカ!もー知らない。」

「バカですよ。じゃ、機嫌直った所で初詣行くか。」

「うるさく言わないなら、行ってあげる。」

「しょうがねーだろ。みのりが可愛い格好してくるのがいけない。」

「だから、やめてってば。」

「じゃあ、ジャージに着替えてくる?」

「来ない。」

「あぁーーー。出かけたくねーー。家でまったりしない?うち誰もいないし。」

「せっかく、お正月から会えたんだからデートしよ?レッツゴー!」
デートしよ?って、チビが下から見上げながら首を傾げてくる。これで狙ってないのが怖いよな。ブツブツと長い願い事を神頼みしていたくせに、大学で友達出来る様にお願いするの忘れた!と、落ち込む天然女。

「友達って神頼みしなくてもよくね?」

「他にも、彼氏が美人な女の子に行きませんようにってのも忘れた。」

「おい、信用ねーな。初売り行くのやめて俺んち行くか。両親帰省中で不在なの、お忘れなく。」

「いや、初売りがうちらを呼んでいる!」

手を引っ張りながら、境内をぐいぐい歩いていくみのり。

「なぁ、春から他のやつに目移りとかやめてね。学部違うから、今まで通り一緒にはいられないし、俺の方が不安。バイトもするんでしょ?」

「大丈夫だって!任せて!」

「天然の任せてほど、怪しいものは無いだろ。あと、転ぶから引っ張らない。」

「信用してよ、お父さん!」

「ちげーし!んじゃ、いやいや初売り行くか。」
エスカレーター式で、大学まで行く2人。キャンパスライフはどうなることやら。天然なみのりにまだまだ、振り回されそうな司のお話でした。