好きなのに、進めない。【番外編】

limeとか電話はそこまでなんだけど、学校内のみのりが最近やけに冷たい。喧嘩した覚えもないんだけどな。部活の引き継ぎ関係で、休み時間とかもバタバタ後輩やマネージャーが来て一緒にいられないから?いや、そもそも今までもこんな感じだから違うか。全くわからないし、聞くにも聞けない。

駿伝いで、小島に聞いてもらっても"自分で考えな"と言う返事のみ。分かったらこんなに苦労というかヒヤヒヤしないんだけど。下駄箱までの廊下で聞いてみても…

「なぁ、怒ってる?」

「怒ってないってば、こないだからそればっかり。」

「お前の態度が怒ってるから聞いてんの。俺何かしたっけ?」

「だから、本当に怒ってないってば。私、帰るから早く部活行きなよ。」

「いや、今日は自主練だしいいわ。帰る。そんで、怒ってる理由ちゃんと答えてもらうから。」

「怒ってないってば!ほら、マネージャーの子来てるみたいよ。じゃあ、頑張ってね。」

「司先輩っ!これから、体育館行きますか?」

「宮田、おつかれ。今日は用事あるから帰るわ。副キャプテンにメニュー伝えてあるから。」

「あ、そうなんですか…聞きたい事があったんですけど、彼女さんともう帰っちゃいます?」

「急ぎの事あったっけ?」

「いや…特には…。」

「じゃあ、帰るわ。お疲れ様。」

もう引退だし、後輩達がやりやすいようにって女子マネージャーを入れてみた結果…めんどくさい。
顧問や次期キャプテンに聞けば良いことを、わざわざ聞きに来たり、後輩達の為にあんまり冷たく当たるのもと思ってたけどこういう女子本当に無理。

「あっ…れ…、司!いいの?」

「別にいーだろ。俺的には、こっちの方が緊急事態だけど。何怒ってんだか知らねーけど。ほら、帰るぞ。」

「だから、怒ってないってば!」

「じゃあ、何が気に食わないの?」

「そんな事無いってば。」

「じゃあ、クレープデートで機嫌直る?」

「直らないけど、デートはする。」

「ほら、機嫌悪いんじゃん。」

「これは私の問題だから、大丈夫なの。司には関係ないでしょ。それよりも、今日はクレープ何個食べれる?」

「注文は2個な。着くまでに決めろよ。」
前からだけど、2人でいるところをあんまり見られたくないみのりはなかなか堂々と一緒に歩いてくれない。今だってそうだ、なんとなく下向いてたり…無理矢理手を繋いでも文句は言ってこないけど、普段から2人の時みたいに可愛くなってくれると良いんだけど。でも、照れた仕草もまた良いんだよな。

「ねぇ、何個食べれる?」

「逆に、どれだよ?」

「レアチーズストロベリークリームでしょ。あとはソーセージピザと生いちごチョコかな〜。」

「今回も甘そうだな…。チーズケーキは捨てられないんだろ?それと、ピザのクレープにする?チョコよりもマシだし。」

「え?3つ食べたいのに!」

「無理だろ。じゃあ、食べ終わってからおかわりすれば?食べられればの話な。買ってきてやるから、後で怒ってる理由白状しろよ。」

「白状って…。…考えとく。」
一人でベンチで待ってるみのりのために、結局クレープを3つ買ってしまう俺…あいつに甘すぎるな。
クレープで釣って、不機嫌な理由教えてもらうかな。

「ん。どれから食べる?」

「3つも!」

「食べれるんだろ?」

「ちゃんと手伝ってくれる?」

「頑張って半分は食べろよ。」

「ピザは、司のだから味見程度で良いよ。実はホットクレープ好きでしょ?」

「なんで?」

「前に美味しそうに食べてたし、ご飯っぽいから?」

「確かに、結構気に入ってる。甘くないし。残りの二つは、みのりの頑張り次第かな。」

「ん〜っ。やっぱり、チーズケーキは裏切らない!美味しい〜幸せ〜。」

「毎回悩まずに、それで良いんじゃん?」

「悩むのが楽しいのっ!」

「はいはい。溢さず食べろよ。いちごクレープが、まだ待機中だからな。」

「食べ進めてても良いからね。」
その顔、絶対に食べれない顔だな。

「味見するなら、先に食べて。残り食べるから。」

「え?いいの!」

「ほら。」

「ん〜っ、こっちも美味しい!美味しいね、司」
甘いもの苦手なんだけど、この顔見ちゃうとな…
でも、次からは絶対2個だな。二人ともクレープを食べ終わり、駐輪場に向かう。

「公園にする?歩きながらにする?」

「ねぇ、やっぱり言わなきゃダメ?」

「ダメ。」
可愛く言ってもダメ。

「じゃあ、公園で」

「了解。捕まって、いくぞ。」

「うん。」
恥ずかしがり屋のみのりから抱きつかれる、この美味しい場面も卒業したら無くなるのかな…とか思いつつ公園に向かう。
二人並んで、いつものベンチに座って本題に…

「で、冷たくしてきた理由は?」

「怒ったり、呆れたりしない?」

「聞いてみないと分かんない。けど、しないんじゃね?」
スカートの裾をいじりながら話始めた。

「女子はめんどくさいとか今まで言ってたのに、最近はずっとマネージャーの子とどっかに消えちゃうし…笑いかけたり、優しくしたり。年下で可愛いし…自信なくて、司にどう接していいのか分かんなくなっちゃってて…」

「うん。で?」
なんて、理由だよ。笑ってるのバレたら怒るだろうな。

「で、というか…笑ってるの?信じらんない!」

「それって、ヤキモチじゃねーの?」

「言わないで!分かってるの!」

「そんなしょーもない理由で、俺冷たくされてたわけ?」

「そんな理由って!こっちは結構悩んでたのに!」

「そんなってのは、そんな可愛い理由なのかよって事だから。怒らせたり、何かしたのかと思ったけど、自分的にはそんな覚えなかったし。謎に嫌われた?とか考えてた。小島に聞いても、教えてくれないし。」
真っ赤になって怒ってるみのりが可愛すぎて、抱きしめずにはいられない。

「もー、だから言いたくなかったの!」

「俺の事、そんなに好き?顔まっか。」
下を向くとすぐにみのりの顔。

「だからぁ…んーっ。んっ、んあぁ。」
そんな顔されたらキスしたくなる。

「顔真っ赤。好きなのは、ずっとみのりだけって言ったと思うんだけど、もう忘れた?後、マジで他のやつに興味ない。俺の5年間なめんな。マネージャーは、部員増えたから、あいつら的にいてくれた方が良さそうだし後輩達の為にって思ってただけなんだけどなんか、ごめん。流石に部活マネをシカトすると、キャプテンとしてやばいだろ。でも、そんな気分にさせてるとは思ってなかった。」

「いや、私の方こそごめんっ。どうにも今までのコソコソ生活から抜け出せず…自信が無いというか…」

「もっと、自信持てるように朝一緒に行くか?」

「いや、無理無理!視線で殺される!てか朝練あるじゃん。」

「いや、来月からキャプテン交代で、俺らは朝練の参加自由になったから、大丈夫。高校生もあと少しじゃん?」

「うーん…それは、そうなんなけど。」

「嫌?俺は、彼女との登下校って憧れてるけど。」

「恥ずかしくない?」

「何が?」

「めっちゃ見られるじゃん!」

「周りはほっとけば良いんだって。嫌じゃなさそうだから、来週からって事で決定な。」

「えー!心の準備が…」

「それまでにしておく事!」

「努力…します…。あと、いつまでこうやってるの?」

「いつまででも?みのりが可愛い事言うから。本当は連れて帰りたいけど、ガツガツしてると思われたくなくて我慢してる。」

「ふふっ。じゃあ、連れて帰られようかな?」

「まじ?」

「まじ…かな。」

「じゃあ、気が変わらないように連れて帰るか。」

「では、連れて帰られます。」

にやけ顔がバレない2人乗り。存分ににやけつつ後ろから抱きついてくるみのりを堪能する司。その後は、もちろん大いにイチャついたのでした。

よく朝、あの楢崎君が彼女と登校している!と言う騒ぎはまた別のお話で。