好きなのに、進めない。【番外編】

女子達が、やたらと雑誌を眺めてアレコレ言ってる。もちろんみのりも例外ではなく、小島達とあーでもないこーでも無いと、毎日同じような事を話してる。

「それ以外、話す事ねーの?」

「別にいいでしょ!」

「ふぅ〜ん。先生来たら起こして。」

「良い加減自分で起きてよ。」

もうすぐ、クリスマスか。クリスマスといえば!毎年部活しか無いんだけど…
今年はみのりがいるし、クリスマスは一緒に過ごせると良いんだけど。そうなると、プレゼントだよな。やっぱ、何か贈りたいな。買いに行く時間も無いし、何が欲しいか分かんないし聞いてみるしか無いよな。
今夜電話した時にでも、聞いてみるか…

夕飯の時に母親から
「ねぇ、クリスマスって部活?デート?どっち?」

「部活じゃん?何、急に?」

「え?デートしないの?」

「だから、何なんだよ。」

「お父さんとクリスマスの日、ご飯食べに行くんだけど、司どうする?さすがに、クリスマスに一人でご飯は寂しいでしょ?だから、デートしたら?」

「向こうの予定も分かんないし、決めてない。」

「みのりちゃんは、デートしたいに決まってるじゃないの!何言ってんのよ!」

「部活の終わる時間も分かんないから。」
本当は午前で終わるけど、教えるとうるさいからな

「そんなの、休めば良いじゃない!」

「俺、キャプテン。休めるわけねーだろ。」
息子のクリスマスに興味津々…こりゃ、クリスマス終わるまでしばらくはうざくなるな…

「プレゼント、どうするの?」
「欲しいもの聞いてきた?」
「高校生のプレゼントって予算5000円ぐらいだって。」
「ペアリングにする?それともネックレス?」
「あ、お揃いでマフラーとか?」
うるさいから、フルシカトして夕飯を食べ進める。母親がこうなったら止められないのは重々処置だから、放っておくのが1番だ。

「お母さんからは、何にしようかな〜」

「何で、親が息子の彼女にプレゼントするんだよ。」

「だって、息子なんて汗臭いだけじゃなの〜。どーせ、部活のTシャツかハーパンでしょ?選ぶ楽しみが無いのよ!お母さん、雑誌まで買ったのよ!ほら」

「歳考えろよ…で、3冊もいらねーだろ。あとその真ん中の雑誌なら、最近女子達が見てるような気もするけど。」

「えー!やっぱ、私のチョイス間違ってなかったわね!司もこれ見て、みのりちゃんに何あげるかしっかり考えなさいよ!仕方ないから、一冊貸してあげよう。」

「いいって、本人に聞くし。」

「聞いたら、プレゼントじゃ無いでしょ!」

「じゃー、どうすりゃ良いんだよ。」

「それとなく、聞くのよ!」

「はぁ〜めんどくせー。」

「いい?それとなくよ!」

「はいはい、ご馳走様でした。じゃ、これだけ借りて部屋行くわ。クリスマスは、夫婦でご飯でもホテルでもどーぞごゆっくり。」

「了解!そっちは、ホテル行っちゃダメよ!あと、司!聞く時はそれとなくよ!!」

それとなくか…苦手だから、何個か選んで聞いてみるか。あいつの事だから、何でも良いって言いそうな気もするけどな。
母からの圧が強すぎて、早々に聞かないと何にする攻撃が終わらない気がする…パラパラと雑誌を見ても、女物のアクセサリーは全然分からないしな。

その夜、電話でそれとなく聞くことにしたが…
「クリスマス、部活の後出かけない?」

「丸一日部活じゃ無いの?」

「なんか、今年は午前中しか体育館使えないみたいだから午後は休みらしい。俺的にはラッキー。」

「じゃあ、午後からデート出来るね。」

「ん。で、何がいい?」

「何って何?」

「なんか気になるものとか?」

「気になるもの?」

「毎朝熱心に女子達で雑誌見てただろ。」

「もしかして、クリスマスプレゼントの事?」

「いや、まぁ、そんなとこ。」

「そんなとこって何それ。」

「そんなに笑わなくても良いだろ。」

「聞き出すの下手すぎでしょ!」

「あぁーー。もう、苦手なんだよ、それとなくみたいの。要らないもの貰っても困るじゃん?んで、何か欲しいものある?」

「まぁ、それとなくとか無理な人だよね。欲しいものか〜デート出来るならそれで良いんだけど、司は逆に何か欲しいものある?」

「いや…俺も特に。みのり達が見てる雑誌を母親が買ってきて予算は5000円ぐらいまでとか、色々書いてあるのは見た。アクセサリーとか色々載ってんのな。」

「司ママ、普段からあの雑誌読んでるの?」

「いや、みのりにクリスマスプレゼントをあげたいとかでコンビニで3冊も買ってきたのを1冊押し付けられた。みのりが気を使うからでしゃばるなって言っておいたけど、すげー張り切ってたから何かしてくるかもな…。」

「何かしてくるって…言い方!いつも貰ってばっかりなのに〜!司ママにも何かプレゼント考えようかなっ!で、司は何が欲しい?」

「別に、欲しいもの無いんだよね。」

「考えておくって事にしよ。まだ日にちあるし。」

「あ。でも、ペアリングは無しな。」

「あっ…うん。やっぱ、好きじゃないよね…。」

「いや、するのが嫌とかじゃなくて、バイトしたりして自分の働いたお金で買いたいから。それまで、待ってて。だから、当分はそれ以外。」

「ふふっ。そんな事言われたらいつまでも待てそう。私もバイト代で買ってあげるね。」

「おぉ。」

みのりは、気づいてるか?ペアリングを買うのは、来年になるかもしれないし、もっと先になるかもしれないって事。だからペアリングを買うその時まで隣にいるって事。買ったらその先も隣にいるって事。

息子がそれとなく聞けるのか、気になった母が部屋の外にいてペアリングを買わない理由を聞いていた事を司は知らない。後々、この事で冷やかされる事になる事も。
翌日、母は息子からの忠告を無視して息子達のマフラーを買いに楽しく百貨店に行くのでした。