好きなのに、進めない。【番外編】

教習所の入校式で、一緒になった菅谷ちゃん。
講義も実技も大体同じようなペースらしく、最近よく話す女の子。そして、めちゃめちゃ可愛いくて、今狙ってる子。ハキハキしてるのに、ちょっと抜けたりそんな所も俺的には結構ツボだったり…。

高校では、そこそそ女子達から人気がある俺にも全然媚びてこないと言うか、意識すらされていないんだろうね、連絡先も聞いてこないし、話しててもガツガツ来ない。彼氏いるのか気になる所だけど、もうちょい、距離詰めてからそっち系の話出してみようかな。
ま、居たとしても大した事ないっしょ。

「この後の講義、取ってる?」

「うん。安田くんは?実技はまだドキドキしちゃうから、講義の方が気が楽かも。こんなんで、この先大丈夫かな…」

「取ってるよ。一緒に行こう。俺は勉強嫌いだから、実技の方が楽しいかな〜講義は学校の授業と同じで、睡魔との戦い。寝ないように毎回必死だよ。」

「分かるー。標識とか多すぎて最終的に全部同じに見えてくるよね。とにかく、短時間で頭に詰め込む作業が辛いよね。」

話しながら、しっかり隣キープ。
講義が始まっても気になって、真面目に聞いてる横顔をチラ見。同じ高校の奴らも何人かここに通ってるけど、菅谷ちゃんの噂してたしみんなチェックしてるよな〜他校生と関わるなんてバイトか教習所ぐらいだしな。こんなに可愛い彼女いたら、マジ自慢できる。

講義が終わり、菅谷ちゃんと駅までの道のりを歩いていると友達が声をかけて来た。
「お友達来たみたいだから、私先に帰るね。安田くん、またね!」と、スタスタ行ってしまう。

「今度狙ってる子だった?」

「だから、邪魔すんなって。」

「わり、わり!あれ、噂の可愛い子じゃん。学年イチモテるやっすーなら、簡単かな?」

「さ。どーかな?とりあえず、何か食べて帰ろうぜ。」

駅に着くと、帰宅ラッシュと電車の遅延が重なったらしく凄い混み具合。空いてる場所を探していたら、ちらっと菅谷ちゃん的な子が見えた。
周りはどっかの部活の男たちでいっぱい。あわよくば、一緒に帰れるかもしれないしという淡い期待で声をかけた。
 
「菅谷ちゃん!」

「あ、安田くん!と、お友達?この時間って事は、あれからご飯でも食べてきたのかな?この時間に電車遅延って、辛すぎるよね。」

菅谷ちゃんに話しかけてから、後ろに立ってる背の高い高校生がめっちゃ見てくるんですけど…。

「みのり、誰?」

「教習所で一緒の安田くんとそのお友達。今日の講義と実技一緒だったの。最近、教習所で仲良くなったって話したでしょ?」

「えーっと、菅谷ちゃんのクラスメイト?」

「知り合いというか…」
「みのりがお世話なってるみたいで。クラスメイトじゃなくてこいつの彼氏。来週から俺も通うから会ったらよろしく。」

イケメン、めっちゃ敵意剥き出し…。俺の魂胆見抜かれてたよな、完全に。その節は、大した男じゃないとか言って、すいません。

「やっすー、今回は相手が悪かったな。すっげーイケメンだけど、超こえぇ。」

「俺も思った。」

同じクラスのバスケ部の奴から聞いた話だと、あそこの高校のバスケ部のキャプテンは、顔は良いけど女嫌いで、話しかけても無視されるで有名だった。
でも、何かの大会で彼女が嫌がらせされたのをきっかけに、しつこくしてくる女子達に彼女への思いを伝えた事でさらに人気が上がったとか。
そりゃそうだよな、あの顔で一途とか理想じゃん。学校でモテるからって調子に乗って、菅谷ちゃんに彼氏が居たとしても別れさせて、付き合おうとしてたなんて無謀だったわ。

翌週からは、キャプテンもマジで入校してきて美男美女カップルって噂になってる。まぁ、キャプテンは噂通り基本的に女子を総シカト。あんなに騒がれてたら、俺なら嬉しいのに本当に嫌そうだ。この間なんて、トイレで会ったら…

「なぁ、みのりの事まだ狙ってんの?」

って…急に話しかけてきた。まじこぇーー!そんな事無いからって答えたけど、

「見る目だけは、認めるけどあいつはやらねぇ。」

だってよ。キャプテン、必死かよ!もう狙ってないから、菅谷ちゃんと喋ってる時に彼女にバレない様に睨みつけてくるのやめて貰えないかな。この間までは、菅谷ちゃんが気になっていたのに、今では違う意味で司が気になるやっすーでした。