好きなのに、進めない。【番外編】

彼女になって初めてバスケ部の試合を見に休日の学校に来た。一人で行く勇気なんて無いから、ちーちゃんと駿くんも一緒に。

何校か集まるみたいで、体育館は知らない制服やカラフルなユニフォームを着た、他校の人だらけ。
いつもの学校なのに別の場所みたい。
そして、凄い熱気で2階まで応援の子で満員。

「うちの学校だけど、アウェー感凄いね!あ、うちの学校発見!」

「本当だよね。どこどこ?あ!いた!コートにいるから、次試合なのかな?」

「みのり、もっとあっち行こうよ!」

「うーん、そうする?でも遠くから見るだけでも良いんだけどね。」

「今日見にくる事、楢崎知ってるんでしょ?なら、近くで見た方が喜ぶと思うよ。ね、駿?」

「そうだよ。俺らも行くし、行こうぜ。」

「うん。でも、気づかないんじゃない?」
こんなに人が居るし、司気づくかな?私的には、バスケしてる所見られたら良いだけなんだけどな。試合が始まると、チーム同士の応援とギャラリーの声援で体育館がうるさい!
試合も白熱していて、楽しい。何より司が、カッコいい…。

「みのり、見惚れてる所悪いけど。私初めて知ったけど楢崎目当ての他校の応援って結構多いのね。」

「私もちゃんと試合見に来たのは、初めてだからビックリだよ。なんだか、綺麗な子ばっかりで、私が彼女で肩身狭いです…。」

「雰囲気に負けるな。奴はずっとみのり一筋なんだから!イケメンで、あれだけバスケうまけりゃそりゃモテますな。ただ、みのり以外の女子への愛想が皆無だけどね。」
あ、駿くんへこんでる。

「ちーちゃん、駿くんが…」

「しゅーん!落ち込む事無いでしょ?楢崎は男として興味ないから大丈夫!周りの男子を威嚇しつつ、密かにみのりにだけデレデレしてるの奴を観察して楽しんでるだけだから!」

「デレデレなんてしてるかな?前よりも学校では優しくなったと思うけど、威嚇なんてして無いよ。する必要無いし。私は女子達に威嚇されてるけどね…。」

試合は、ギリギリだったけどうちの学校の勝ち!ギャラリーに挨拶する時に、司と目があった。体育館入り口のドアを指差して、降りて来て的なジェスチャー。お願いだから、めっちゃ人が見てる時にやらないで…見られてるよ…。

「ちょっと、行ってくるね!」

「人多いから、うちらはここで空くまで待ってるわ。」

「うん、ささっと行ってくる。」

「ごゆっくり〜」

階段を降りていくと、試合の終わったチームやら行き来する人がたくさん!これ、見つけられるかな?と、思っていたら、司に捕獲されて空いてる場所まで連れて行かれたのは、いいけれど…

"あれが、彼女?普通すぎ"
"新しいマネージャーじゃ無いの?"
などなど、やっばり耳に入るとへこむ。さらに冷たい視線まで…司の目の前だし、逃げ出したい。

「ほっとけ。あんな、二度と会わない奴の事。」

「でも悲しい。もう帰りたい。」

「じゃあ、俺言い返してくるか?」

「それは、嫌!」

「って、言うと思った。他の奴は別に良くない?それよりも、一緒に帰れる?自校開催だから、片付けたりであと1時間ぐらいかかるんだけど。」

「長っ!待つの嫌だから先に帰るわ。ちーちゃんと駿くんも居るし。」

「お前、冷たいやつだな!そこは待ってるね。じゃねーの?」

「え?だってそんなに外で一人で待てないよ。またヒソヒソ何か言われるの嫌だし。司のファンの子達が待っててくれるでしょ?」

「それは、ただウザいだけのやつな。」

"キャプテーーン!"

「呼ばれてるよ。」

「駿に連絡しておくし、これ着て待ってろよ。じゃーな。」

「出た、部活ジャージ。」
とりあえず、上に戻ろ。

「ただいま。」

「あ、おかえり。早かったね!」

「キャプテン忙しそうでした。で、帰るの待っててってさ。断ったけど、ジャージ託されて帰れず。球技大会もそうだけど、何で運動部って部活ジャージ着せたがるの?サッカー部も?」

「えっ?俺?急に?そりゃ、彼女ってことを周りにアピールしたいから?千夏は別に嫌じゃ無いっしょ?」

「運動部の彼氏いる子の特権じゃない?先輩達が彼氏のジャージ着てるの憧れたから、駿のジャージ着るの嫌いじゃ無いけどな。みのりさんや、楢崎のジャージ着たい子いっぱい居るんだからね!んでもって、奴もみのりは俺のですってアピールしたいんだって〜ね、駿?」

「あいつの思い汲んでやれば?(昔からずっと必死なんだから)じゃ、周りを牽制してるイケメンキャプテンが片付け終わるまで待ってから帰るか。ってか、待ってろってlime来てるわ。」

「良いんだけどさ、コソコソ何か言われり。ジロジロ見られたりがね。」
付き合う前も後も、周りがめんどくさいんだよね。普通に帰りたいだけなのに。

ーーー

ーーーーー

「遅く無い?」
遅すぎる!全然出てこないし、連絡もないし。

「そろそろ出てきても良いよな。他校のやつもボチボチ帰り始めてるし。俺、見てこようか?」

「いや、私見てくるよ。カバンよろしく!」
もー、1時間ぐらいって言ってたのに。体育館入り口にはまだ結構生徒達がいるけど、中まで入っちゃって良いかな?誰か知ってる人居れば良いんだけどな…。
部室に向かっていたら、不機嫌な司に会った。

「遅いし、待ちくたびれた。」

「悪りぃ。邪魔が入りまくって中々終わらなかった。それより、俺のジャージ着て無いのかよ?」

「あぁ、大きすぎるんだもん。ほら。腰に巻いてちゃんと預かってるから!もう返すね。」

「ここから、駅までは着て行けよ。」

「いや、大きくて邪魔だから。」

「良いから。ほら着るの。」

「いや、良いって。他の人もいるから。」

「他のやつがいるから着ていくんだろ。彼女だれだの、別れろだの、連絡先教えろだのしつこいやつのせいで、中々終わらなかったんだから。
これ着て歩いておけば彼女が誰か言わなくてもわかるだろ。香水臭いは、腕とか触られるわで、気持ち悪かったわ。」

「それは、ご愁傷様でした。でも、着てたら私への突き刺さる様な視線がさ…凄いわけよ。」

「俺いるし、大丈夫だろ。ほら、駿と小島待ってるんだろ。行くぞ。」
勝手なやつだ!ジャージを羽織らされて、玄関まで行き靴を履いてると、視線がね…隣に司もいるし、気まずいー。
そして、この空気読めない男が…

「帰りにどっか寄ってく?腹減ったー。うちの母親が連れてこいって言うから家寄ってく?どっかで食べてから帰る?」
って…ほら、もぉおー。

「ちょっと!ここで言わなくても!」
小声で抗議すると…

「ここで言うから意味あるんだろ。」
諦めて、司の後ろに隠れるように出ようとしたら…

「「「楢崎くん、連絡先

  「無理。」

limeだけでも

  「邪魔。」

 ……。

  「さっきも言ったけど。全部無理。
  あんたらしつこすぎ。見たらわかる
  よね?彼女といるんだから。
  迷惑だって言ってんだろ。」

でも、私たち前からずっと

   「だから?」

この子は3年も楢崎君のこと好きで。
せめて連絡先だけでも
   
   「頼んで無いし。もう駅で待ち伏
   せしたり、隠し撮りしたりやめ
   てくんない?気持ち悪いから」

そこまで言わなくても…。
    
   「3年が何?こっちは5年間思い
   続けなてやっと付き合えたんだ
   けど。邪魔すんな。まじで。
   帰ろう、みのり。」

 ………。」」」

「ねぇ司。あんなにキツイ言い方しなくても、良かったんじゃ無いの?」
手を引かれながら、ちーちゃん達の所にカバンを取りに行く。人のいる前で…あんなの告白と一緒じゃん。

「いや、関係無いし良いっしょ。それに。俺は無視したり言い返したり出来るけど、みのりはずっと見られたり何か言われるの嫌がってただろ。あのぐらい言わないと効かねーだろ。」
知ってたんだ。優しすぎるよ。女の子達には、申し訳ないけどまた好きになっちゃうよ。

「司のおうちはまた今度にして、帰りにちーちゃん達誘ってクレープ食べて行く?」

「それ、デザートだろ?飯は?」

「ご飯食べてからは、クレープ入らないから!」

「足りねー。ファミレスの帰りな。」

「だから、食べれないってば。」

「じゃあ、ファミレスのパフェに変更だな。みのりが好きな、なんちゃらフェア的なのやってんじゃねーの?」

「なんちゃらって…、雑な。それなら、人に疲れたから家の近くのファミレスが良いな。」

「りょーかい。行こぜ、さすがに遅すぎて駿怒ってるんじゃん?」
2人の元に戻ったら、遅いから文句言われたけど経緯を話したらちーちゃんが「楢崎やるじゃん。良かったね」って言ってくれた。

バスケの試合は、カッコいいところが見れたし。帰りは、ビックリしたけど良い事あったし。電車に揺られながら、今日は来てよかったなと思いながら司のジャージのギュッと掴んだみのり。
もちろん、それにときめいた司でした。