(……だからクレイス様は私のことをこんなにも気にかけて、色々なことをしてくれたのね)

 こんな自分のためになぜだろうと思っていたが、自分がクレイスを庇って呪いを代わりに受けたから、クレイスは自分のために色々と手を尽くしてくれたのだ。花も、宝石も、楽しい時間も、全てはそのためだったのだ。
 全てが腑に落ちて、ティアラはなんだかとてもすっきりとした気持ちになった。だが、その反面、なぜか心がチクチクと痛む。クレイスの気持ちが、純粋なものではなかったと知って、ティアラの心はなぜか悲しくなっていた。だが、そんな心とは裏腹に表情は無表情のままだ。

「ティアラ、誤解しないでほしい。俺が君のために色々としてきたのは、罪悪感のためじゃない。俺が、君を好ましく思っているのは純粋な気持ちからだよ」
「……そんな、気を遣わないでください。私は別段面白くもない、つまらないただの令嬢です。たとえ呪われていなかったとしても、それは変わらなかったと思います」
「気を遣ってなんかいない!それに、君を美しいと思ったのは呪いを受ける前からずっとだ」

(美しい?可愛らしさのかけらもない、こんな私が?)

 無表情のままティアラがクレイスの顔をじっと見つめると、クレイスは瞳を逸らすことなくティアラを見つめ返す。

「君は俺を助けた時、良かったと言って俺に微笑んだんだ。その微笑みを見た時、俺は君を美しいと思った。自分のことよりも、俺がなんともなかったと知って嬉しそうに微笑む君の心があまりにも美しくて、俺は君から目が離せなかった。今でもそうだよ。誰がなんと言おうと、君を美しいと思っている」

(まだ子供だった私を、美しいと思ってくださったの……?それに、今もだなんて)

 クレイスの言葉に、ティアラの胸は大きく高鳴った。今まで、美しいだなんて言われたことのなかったティアラは、クレイスの言葉を信じることができない。できないのに、どうしてか胸は弾んで嬉しい気持ちが沸き起こる。

「ティアラ、どうか俺に、君の呪いを解かせてくれ」

 懇願するようなクレイスに、ティアラはどう返事をしていいのかわからない。