あなたのキスで血が巡る


「その痣はどうしたの?今、ちゃんと生活出来てるの?」

日野石くんの言葉に流れた涙を拭うと、わたしは「今は、、、ある人の家に住まわせてもらってる。」と答えた。

「ある人?」
「どこかの会社の社長さんみたい。名前は広瀬さんで39歳。それくらいしか、分からない。」
「えっ?それくらいしか知らない人のところで暮らしてるの?」

日野石くんの言葉に、わたしは俯いて頷いた。

「どうゆうこと?その人とは、どこで知り合ったの?大丈夫な人なの?」
「わたしが生活に困ってて、風俗で働こうとしてた時、声掛けられて、、、。うちに来ないか?って。その代わり、夜の相手をするのが条件で、、、それで広瀬さんに飼われてる状態。」
「飼われてるって、、、」
「わたしは野良猫同然だったから。拾ってくれた人がいただけ、有り難いと思わないとね。」
「でも、、、その痣、その広瀬って人につけられたものなんじゃないの?」

日野石くんにそう言われ、わたしは首元の痣に触れた。

「わたしには、、、これくらいが丁度いいんだよ。わたしは、望まれて生まれてきたわけじゃないから、、、生きてるだけで奇跡。わたしの存在なんて、誰にも見えてないから、、、どうでもいいの。わたしには、こんな生き方しか出来ないから、、、」

すると、日野石くんは強い口調で「俺には見えてるよ。野花のこと。」と言った。

「高2の時のクラス替えで初めて野花の存在を知った。いつも一人で居て、誰とも関わろうとしなくて、、、いつも無表情なのに、どこか寂しそうで、、、ずっと気になってた。」

え、、、日野石くんが、わたしのことを気になってた?

わたしからしたら、日野石くんは誰からも好かれていて、成績も良くて、バスケ部のキャプテンで女子たちから人気のある印象がある人だった。

そんな日野石くんにわたしの存在が見えていたなんて、、、信じられない。