あなたのキスで血が巡る


それからもわたしは自分の身体を売り続け、ネットカフェに泊まったり、時にはホームレスたちに紛れることもあった。

そんなある日、わたしはある仕事を思い付いた。

向かった先は、ネオン街。
わたしはある一件の風俗店の前で立ち尽くしていた。

ここなら、寮生活をしながらお金を稼げる。

そう思い、中へ入ろうとした時だった。

「お嬢さん。何してるの?」

その声に足を止め、ふと声がした方を見ると、そこにはスーツを着た30代半ばくらいの男性が立っていた。

「ここの風俗嬢?」
「いえ、、、これから、そうなる、予定ではありますけど、、、」

わたしがそう答えると、その男性はわたしの目の前まで歩み寄って来て、わたしの顔を覗き込んだ。

「風俗嬢にするには勿体ないよ。君、可愛いから。こんなとこで働くなら、俺に飼われない?」
「、、、飼われる?」
「俺、恋人もいらないし、結婚にも興味がないんだ。だけど、癒しは欲しい。だから、俺の家に来ない?生活に不自由はさせないよ?その代わり、夜の相手だけしてくれればいい。」

それが広瀬さんとの出会いで、わたしは今に至るのだ。

あれから2年経つんだ、、、

わたしには許されない"普通"。

輝かしい同世代の人たちを見ていると悲しくなってくる。

わたしはベンチから立ち上がると、広瀬さんの家に帰ろうとした。

すると、

「野花?もしかして、野花じゃない?」

そう話し掛けてくる声が背中から聞こえ、わたしはゆっくりと振り向いた。

振り向いたその先には、高校の時に同じクラスだった日野石玲の姿があった。