あなたのキスで血が巡る


わたしが気が付いた時には、部屋はまだ真っ暗で裸のまま一人でベッドの上に横たわっていた。

ふと、サイドテーブルの上に置いてあるデジタル時計を見ると、時刻は"3:15"と光っており、あれから約4時間は気絶していた事に気付く。

わたしは身体を起こすと、バスルームへと向かった。

そして、汚い自分を少しでも洗い流そうとする。

鏡を見ると、首に痣が出来ていた。
それから、手首にも。

でも、これはいつものことだ。

わたしは所詮、拾われた野良猫。
ご主人様には、抗えない。

ただセックスをするだけで、家に住まわせてもらえて、ご飯も食べれて、お風呂にも入れて、ベッドで寝られる。

行く宛もなく、愛を知らないわたしにはお似合いの生き方だ。

わたしはシャワーを浴び終わるとガウンを着て、広いリビングへと向かった。

そして、ベランダへ出られる大きな窓際に置いてある一人掛けソファーに座ると、空を見上げた。

わたしは、これで生きていると言えるんだろうか。

この夜空の下に存在していていいのだろうか。

いや、存在しているだなんて、おこがましいか。

きっと、わたしの存在なんて誰にも見えていない。

わたしは、広瀬さんの"飼い猫"という名のオモチャだ。