あなたのキスで血が巡る


わたしはダイニングテーブルの椅子に腰を掛けると、「いただきます。」と言い、広瀬さんが作ってくれたミネストローネをスプーンで掬い、口へと運んだ。

「どうだ?」

頬杖をつき、わたしを見つめながら広瀬さんが訊く。

わたしは「美味しいです。」と答えた。

「リラは、段々色気も出てきたなぁ。」
「、、、そうですか?」
「うん、良い女だよ。」

そう言って、広瀬さんは赤ワインを口に含んだ。

「でも、、、わたしばかりを抱いて、飽きないですか?他の女の子に変えたいとか、思ったりしないんですか?」
「それは思わないなぁ。リラは今まで抱いてきた女の中で一番最高な女だよ。だから、他の女に変えたいなんて思わないし、リラを手放す気はない。」

広瀬さんはそう言うと、優しく微笑んだ。

これは褒められてるの?

褒められてるんだとしても、、、全然嬉しくない。

"手放す気はない"、、、

ってことは、わたしは広瀬さんから逃れられないんだ。

逃れられたとしても、行く場所なんて無いけど、、、

いや、、、

わたしはその時に日野石くんの事を思い出した。

日野石くんなら、助けてくれるかな、、、
なんて、何考えてるんだろう。

わたしなんかが助けを求めたって、日野石くんに迷惑がかかるだけ。

わたしはミネストローネを飲みながら、逃れられない今の自分の変わらない人生を、明るい未来なんて無い自分の人生を諦めるしかなかった。