彼のほうを向いてしまえば、わたしもつられてしまって、とめどない涙が零れてしまうと思ったから、星を眺めながら必死に頬を持ち上げる。
ほんとは、嬉しかったけれど、嬉しさの真ん中に悲しさもあった。嬉しさを覆ってしまいそうなほどの悲しさが。
だから彼が女の人と一緒にいるのを目撃してしまった時は、胸が張り裂けそうなくらいに苦しくて、うずくまって、嗚咽が出るほどひとりで泣いてしまった。
わたしは、19歳のこの時期に命を終えた。
それも、人の手によって。
あとから知ったのだけれど、犯人はわたしのストーカーだったらしい。顔をみたけれど、誰かはわからなかった。わたしが思い出せないだけで、その人との接点は何かしらあったのかもしれない。
わたしのことをずっとみつめていた。愛していた。
という誰かの、得体の知れない感情によってわたしは人生を終えてしまった。だから、すきな気持ちはこわい。そのひとは、感情に自分をコントロールされてしまってわたしを殺したのだ。
愛ゆえに、そのひとは犯罪を犯してしまった。
愛ゆえに、わたしは真っ直ぐ空へと浮かぶこともできなくて、彼のまえに現れてしまった。
愛ゆえに、彼はわたしが見えるようになってしまった。霊感なんてこれっぽっちもなかったのに。
わたしの事件がきっかけで、同級生のみんなが星の観察という名のお喋りをすることはぱったりとなくなってしまった。


