わたしたちは、わかっている。
このままじゃだめだって。どちらかが終止符を打たなければならないということくらい、ちゃんとわかっている。
——彼ができないのならば、わたしがその役目を担わなければならない。
「星の観察するの、今日で終わりにしよう?」
「いやだ」
今度はしっかりと彼のほうをむいて彼の瞳を見て言ったのに、即答されてしまった。
即答した彼の顔は怒っていると思ったけれど、じっと見つめていたら、泣くのを我慢しているせいで険しい顔になってるっていうのがわかった。
「わたしね、ずっと聞きたいことあったんだよ」
「…なに」
「あんた、好きな人できたでしょ」
「…っ、なんで」
わたしの問いかけに、大きく見開かれた瞳がゆらゆらと揺れている。確信的な言葉は返ってこないけれど、彼の顔がそうだと伝えている。
…やっぱり、そうなんだね。
わかっていたけど辛いなあ。
「たまたまね、車で一緒にいるところ見ちゃったんだ〜」
あのときの光景はしっかりと覚えている。
だって、彼のひだまりみたいな、柔らかい表情を見たのは本当に久しぶりだったから。
「ごめん」
「なんで、謝るの?あんた謝るようなことしてないじゃん」
「…」
「わたしはね、すっごく嬉しかったんだよ」
「…っ」
「1番…家族よりも誰よりも、いちばん悲しんでくれたあんたがやっと前に進んでくれたんだって思ったら嬉しくて仕方ないの」
そう呟くと、隣からはすすり泣く声が聞こえてくる。


