半宵にしがみついて【完】




「え、なにしてるのっ?そこ汚いけど…?」

「まーまー。ちっちゃいことは気にしねえのよ、俺」

「いや、全然小さなことじゃないんだけど」


なぜかニンマリとした、むかつく顔を向けられて、なんだこいつ。って思った。


「いいじゃん、こうやったら星よく見えるし。それに前だってこうやって寝そべったじゃねえか」

「…それ、いつの話してるの?」

「多分高校のときだな」

「もう何年も前の話だよ」




「懐かしいな」と小さく笑った彼は、自分の腕を枕にして、両足を伸ばして、自分の部屋にいるかのような寛ぎ具合だから呆れてしまう。




「澄依」

「…なに?」

「お前もここ、寝転んでみ」

「え、絶対嫌なんだけど。わたし汚れたくないし」

「特別に俺の右腕貸してやるから。ほら」

「いや、その右腕も絶対臭いし。やだ」

「お前な、さっきから失礼だぞ」



むっとした顔が面白くて、ついクスッと笑ってしまった。

呆れているはずなのに、名前を呼んでもらえただけで喜んでいるちょろいわたしは、彼の言う通り隣に寝転んでしまっている。


アルコールや香水のにおいを纏っているからこの距離だと臭いMAXなはずなのに、それが気にならないくらいどきどきしてしまっている。


流れ星を見つけて、一刻も早くお願いごとをしなくてはいけないのに、正直それどころではない。