音のするほうへと目線を動かすと、少し離れた場所に小さなライトと人影が見えた。そしてその影はだんだん大きくなってこちらに向かってくる。
「ごめん…!」
「遅いんですけど」
あっという間にすぐ側までやってきた人影…わたしの幼なじみは、目の前で息を切らしながら膝に両手をついている。そんな彼にわたしは、立ち上がりながら間髪入れずに言葉を零した。
わたしの一言目は、安定に全然可愛くない。
腕はしっかりと組んで仁王立ちをして、睨みつけて、怒っているんだぞ。とアピールをしてしまっているし。
でも、実際はこれっぽっちも怒っていないんだよ。むしろ、わたしの心はほっとして喜んでいるけれど、今更態度には出せない。
わたしはずっと、彼の前ではそうだから。
わたしってこの人の前じゃ、とことん素直じゃないし。今更そんな可愛らしい女の子のような姿を見せれば、怪しまれるか鼻で笑われるかのどちらかだ。
「ごめんって。急遽飲み会入ったんだよ」
「…はあ、そうだったんだ。それなら、言ってくれればよかったのに」
「…、」
つい、ぽろっと零してしまった不満に、固まる彼の表情。
そんな彼を見てハッとした。
…どうやって、彼に言わせるつもりなんだろう、わたしは。


