そんな気持ちを込めているのに、隣からは怒られてしまった。
ほんとうに、わからず屋だなあ。だから、あんたはわたしの好意にずっと気が付かないんだよ。
周りのみんなは、ちゃんと気がついていたのに。
「言いたいことあるから、ちゃんと聞いて」
「聞きたくない」
「…わたしより、大人でしょ?年下になったわたしのワガママくらい、聞いてくれたっていいじゃん」
そう言っているのにも関わらず、彼は俯きながら首を横に振って、嫌だという。
必死に懇願しているその姿を目に映していると、胸がこれ以上ないくらいに締め付けられて呼吸をするのも苦しい。
「わたしね、」
小さく息を吐いてそう言ったわたしに彼はぱっと顔を持ちあげると、「言うな」と言いながらわたしの口もとに手を伸ばしてきた。
「水稀《みずき》のこと、すきだよ」
「…っ」
「ずっと、だいすきだったよ」
だけど、彼の手がわたしの口を塞ぐことはできない。
だって、わたしはもうしんでいるから。
彼とは、決して触れ合えない世界線にいるのだから。
もう触れ合うことはできないけれど、水稀は声にならない声をあげながらゆっくりと、わたしに寄りかかるようにして顔を伏せた。
下を向いている彼の肩は、震えていた。


