嘘でいいから、 抱きしめて

☆。.:*・゜☆



「─あれ?先生、今日は早いね」

彼女はそう、ベットの上で不思議そうな顔。

コートを脱ぎながら、櫂は頷いた。

「今日はクリスマスだからな」

「ああ……そういや、毎年、この季節に騒いでた」

「?、君は参加したことないのか?」

「え〜するわけないよ。僕が参加したら、周囲が気を使うだろう?それに、騒がしいのは、あまり得意じゃないんだ」

─いつも騒がしい彼、もとい彼女がそう答えたのが、櫂は意外だった。

ああ、しかし、ここで過ごす彼女を見ていたら、当然と言えば、当然か、なんて。

「というか、先生、なんで来たの?」

「来たらダメなのか」

「別にいいけど……夕飯は終わったよ?今日も美味しかった。ありがとう」

「それは良かった」

先程、夜勤の職員から“完食した”と聞いていたので、それを褒めるつもりで頭を撫でると、

「……先生って、弟が妹いるの?」

と、くすぐったそうに聞いてきた。

「?、何故」

「たまに、こうやって僕の頭を撫でるでしょ」

「不快か?」

「んーん。……“昔から”好きだよ」

そう言って目を閉じるハルの頭を、櫂は撫で続ける。
少し身を任せるようなハルは最近、手負いの猫から家飼いの猫に変化した。

入院期間がそろそろ2ヶ月を突破するとなると、こうも変わるのか。

もっとも、会いに来る人物が櫂か、勇真さんくらいなもので、基本、家族以外は面会謝絶の手続きを取っているため、仕方が無いかもしれないが。