眠る彼女の世話係(改訂版)



 ーー久しぶりに、夢を見た。
 薬で眠っていたせいで、夢なんてしばらく見ていなかったのに。

 目の前には川が流れていて、その向こう岸には以前と変わらない姿の家族がいた。

(これ……三途の川?)

 現世と死後の世界の境界線となる三途の川。向こうに死者がいたのだから、そう私が思うのもきっと無理はなかったのだろう。
 この川を渡れば家族に会える。川に足をつけかけた私に、家族は大きく身振り手振りしながら『こっちに来ちゃダメ』と叫んだ。

(そういえば前にこんなシーン書いてたな……)

 その物語では主人公はその言葉で引き返すけど……私は、違う。だって、会いたくて会いたくて仕方がなくて。
 みんなが死んだあの日あの時、私の空は曇りでもなくて、本当に真っ暗になったのだ。

 私は溢れた涙で声を詰まらせる。動いているみんなを見れて嬉しい涙と、確実に亡くなったことを悟った涙とでぐちゃぐちゃだった。

「だって、1人で……」

 言いかけて、パッと夏樹の顔が脳内に浮かんだ。幸せになる手伝いをさせてくれと、優しく言うあの声を思い出した。

「……ねぇ、私、もうどうしたらいいかわかんないよ……」

 進めようとした足の力がヘナヘナと抜ける。そのまま座り込んだ私は今までのことが全て悪夢だったらよかったのに、と祈るように目を閉じた。