眠る彼女の世話係(改訂版)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「……ぁ……」

 どれくらい眠っていたのだろう。相変わらず日付はわからない。今の時間帯が昼過ぎくらいであることだけが、いつもと違ってわかった。だって、

「なん……で、カーテン……」
 
 窓際に物思いに耽っている様子で立っていた夏樹がくるっと振り返る。
 その瞬間、少し寒くて、でもうららかな春の日差しに暖められたあったかい空気が、鼻腔をふわりとくすぐった。

(あぁ、もう春なのか)

 私の家族が死んだのは冬だった。凍えるような寒さの中で亡くなったから、みんなの体が冷たいのはきっとそのせいなんじゃないかと、そう思いたかった。


「カーテン閉めてるままだとさ、空が明るくなってることにも、季節が変わっていることにも気づけないじゃん?」


 夏樹は弾けるような笑顔でそう言った。
 私は思わず数秒、フリーズしてしまう。

「あはは……お姉ちゃんとおんなじこと言ってる」

 その笑顔が、その言葉が私が部屋に閉じ籠ったあの日の姉の姿と重なった。
 ぱらぱらと涙がこぼれてくる。夏樹は目を見開いた。そして失言してしまったのか、とパッと口元を押さえた。


『りるは、大好きだよ』

 風でふわふわと揺れるカーテンの前に、いるはずのないお姉ちゃんの姿が見えた気がした。

(幻影でも、なんでもいい。だからーー)

 腕を伸ばして、掴もうとした手はそのまま空を切った。ベッドから飛び出た私はそのまま床に転げ落ちる。

「!?りるはちゃん?!」

 夏樹が慌てふためいた様子で屈んで私を抱き起こす。

「うぅぅぅぅー……っ、死んじゃった、死んじゃったよぉ……」


 子供のように泣きじゃくる私を、夏樹はぎゅっと抱きしめた。