眠る彼女の世話係(改訂版)

 睡眠周期が途中ではっきりと起きてしまったことで乱れてしまったのか、それとも情緒不安定になってしまったせいか、彼女は眠り続けている。

(ーー今日で3日目、か)

 俺は流石に不安になって、昨日上原さんに連絡を取った。彼女はどうやら薬で冬眠に近い状態になっているらしく、5日経っても目が覚めないようならまた連絡をくださいと言われた。
 
 その間にも俺は彼女の家に来て、業務を終えてはすっかり定位置になってしまったベッドのそばで彼女の小説を読み進めていた。彼女のメインジャンルは恋愛小説だったが、生死に関わる小説が多かった。死にたい側と、生きたい側の感情がそれぞれ叫ばれるシーンでは両者の考え方にも説得力があって、どうしようもない現実がただただそこにはあるだけでーー。

(自分1人が取り残されてどうしようもなく死にたいのに、最初に言っていた「家族とした死なないって約束」、それに縋ってでも生きなきゃいけないなんて、苦しい、よな)

 ベッドに目を走らせる。あのあと寝返りを打ったのかわからないが、彼女は真正面を向いて寝ている。そのほっぺたにはうっすらと涙の筋が残っていた。

 俺はあることを思いついて、小説をパタンと閉じた。