「じゃあさ、大人になって僕が成功して、お姉さんが見つけてくれて、きっと出会えたら...その時は僕のお願い聞いてくれる?」
「いいわよ。何かな?お願いって」
「秘密。」
ーーーーーーー
推し。それは生きる糧。時に推しの全てを知りたくなる。
...しかし。あくまでみんなのもの。一線をひかねばならないのである。
「猫屋くん...今日も尊い。あ〜神様。猫屋くんを生み出してくれてありがとうございます!」
アイドルグループ「CandyBoys★」の昨日公開されたばかりの新着MVを見てそう呟くこの頃。仕事にくたびれ、彼氏もいない。しかし推しである猫屋歩夢くんとの妄想に明け暮れる日々はかなり幸せだ。30手前となった今、このままでいいのかと少しは思うが、推しを見ればその不安は吹っ飛ぶ。猫屋くんの息遣いや、キラキラの笑顔、歌い終わりに少し首を傾ける仕草、それはもう、どんな高級料理よりも絶品だ。
アイドルはみんなのもの。それでも、自分のものになることに憧れる。
...そんな叶わない夢を抱きながら、推しの声を聞き今日も眠りにふける。アドレナリンが出て多少寝れなくなるものの、聞かなければ寝られない。少々寝不足気味で仕事に行く毎日は辛い。しかし推し活では金が湯水のように消えていくので、稼がなければならないのである。
〜翌日の夜〜
今日も仕事を終え、疲れ切った足を引きづるように帰路に着く。なんの変哲もない今日が、特別な日になるなんて、この時は想ってもいなかった…。
仕事を終えた私が向かう先は、自宅の裏路地にある「イタリアンバー Hiroki」。最近では週に3回くらい通っている。洒落すぎていない居心地の良いバーで、お気に入りの場所である。最近では、マスターに「いつもありがとうございます。」と言われるくらいには常連になった。特別仲良く話したことはまだないが。
バーに向かう途中の夜道は少々怖い。細く人通りのない場所にぽつん、と構える店のため、少々ドキドキするのだが、最近は慣れてきた。駅前はそれなりに人通りはあるものの、住宅街に入れば、人通りはグッと少なくなる。控えめなバーの明かりが見えてきたところで、目の前の人影がふらりと地面へ吸い込まれた。
「だ、大丈夫ですか..!?」
頭が真っ白になりかける。目の前の人が倒れるなんて初めてだったのだ。暗くてよく見えないが、20代男性といったところか。それに帽子にサングラス、を着用している。なんだかち少し危なそうな人だな、と想ったがそんなことを考えている暇はない。汗がひたたれ、とても苦しそうなこの人を病院に連れて行かなければ。苦しそうに頭を少し傾けると同時に、サングラスがずれた。
「え…」
思わずそう声を漏らす。その目には見覚えがある。顔色は悪く、メイクもとれかけているので見慣れている顔ではない。それでも...スラリとした鼻。子猫のような唇。そして誰よりも魅力的なキャッツアイ。
間違いない…。
我が推しの猫屋歩夢くんだ。
「いいわよ。何かな?お願いって」
「秘密。」
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推し。それは生きる糧。時に推しの全てを知りたくなる。
...しかし。あくまでみんなのもの。一線をひかねばならないのである。
「猫屋くん...今日も尊い。あ〜神様。猫屋くんを生み出してくれてありがとうございます!」
アイドルグループ「CandyBoys★」の昨日公開されたばかりの新着MVを見てそう呟くこの頃。仕事にくたびれ、彼氏もいない。しかし推しである猫屋歩夢くんとの妄想に明け暮れる日々はかなり幸せだ。30手前となった今、このままでいいのかと少しは思うが、推しを見ればその不安は吹っ飛ぶ。猫屋くんの息遣いや、キラキラの笑顔、歌い終わりに少し首を傾ける仕草、それはもう、どんな高級料理よりも絶品だ。
アイドルはみんなのもの。それでも、自分のものになることに憧れる。
...そんな叶わない夢を抱きながら、推しの声を聞き今日も眠りにふける。アドレナリンが出て多少寝れなくなるものの、聞かなければ寝られない。少々寝不足気味で仕事に行く毎日は辛い。しかし推し活では金が湯水のように消えていくので、稼がなければならないのである。
〜翌日の夜〜
今日も仕事を終え、疲れ切った足を引きづるように帰路に着く。なんの変哲もない今日が、特別な日になるなんて、この時は想ってもいなかった…。
仕事を終えた私が向かう先は、自宅の裏路地にある「イタリアンバー Hiroki」。最近では週に3回くらい通っている。洒落すぎていない居心地の良いバーで、お気に入りの場所である。最近では、マスターに「いつもありがとうございます。」と言われるくらいには常連になった。特別仲良く話したことはまだないが。
バーに向かう途中の夜道は少々怖い。細く人通りのない場所にぽつん、と構える店のため、少々ドキドキするのだが、最近は慣れてきた。駅前はそれなりに人通りはあるものの、住宅街に入れば、人通りはグッと少なくなる。控えめなバーの明かりが見えてきたところで、目の前の人影がふらりと地面へ吸い込まれた。
「だ、大丈夫ですか..!?」
頭が真っ白になりかける。目の前の人が倒れるなんて初めてだったのだ。暗くてよく見えないが、20代男性といったところか。それに帽子にサングラス、を着用している。なんだかち少し危なそうな人だな、と想ったがそんなことを考えている暇はない。汗がひたたれ、とても苦しそうなこの人を病院に連れて行かなければ。苦しそうに頭を少し傾けると同時に、サングラスがずれた。
「え…」
思わずそう声を漏らす。その目には見覚えがある。顔色は悪く、メイクもとれかけているので見慣れている顔ではない。それでも...スラリとした鼻。子猫のような唇。そして誰よりも魅力的なキャッツアイ。
間違いない…。
我が推しの猫屋歩夢くんだ。