ノルディクス伯爵家にて。

「で、殿下?!」
「セレイアに会いに来た」
「今しばらくお待ちください」

セレイアはおずおずと出てきた。

まったく笑っていない、むしろ死んだ眼でアレクサンドリアを見る。

(どうして? とても嬉しいのに!)

「セレイア……?」
「なんでしょう?」

とても冷たい声になった。

アレクサンドリアはセレイアに抱きつこうとした。
セレイアが両手で制止する。そして、ビンタしてしまった。

(ちがう! ちがうの――!)

ぽろぽろ涙をこぼしながらセレイアは混乱して逃げてしまった。
その場にいる全員が驚いている。

「殿下、セレイアは番ですよね?」
「そのはずだが?」

左頬を押さえながら答える。

「とりあえず頬を冷やしましょう」

ノルディクス家の全員がびくびくしている。



「どうして?」
(本当は笑顔で大好きって言って甘えたかったのに~!)

セレイアは気が付いた。

「これが……」
(魔法? 好意を示せない制約魔法なのね)

セレイアは頭を抱えて左右に振る。

「どうしよう」
(これじゃ殿下に嫌われちゃう!)

例えば醜く見える魔法とかあるだろうに、チョイスが絶妙で地味に嫌な魔法をかけられたと思うセレイア。

「最悪だわ」