『許せない、許せない。何が番だ』

誰かの声がする。

『殿下に愛されないように、お前に魔法をかけてやる』

「いやっ!」

セレイアは飛び起きた。
怖くなって自分を抱きしめる。
一体どんな魔法をかけられたのだろうか。
鏡を見ても変化はない。

「セレイア様大丈夫ですか?」
叫び声を聞きつけメイドのロロがドアから覗き込んでいる。

「私、大丈夫かしら?」
「証が痛むのですか?」

ロロにはわからないみたいだ。

「いえ、そういう訳ではなく、さっき……」

説明しようとしても口が動かない。
どう頑張っても口が動かない。

「ん、もう! どうして?!」

魔法の事を誰かに伝えなくてはと思うのにうまく行かない。


× × ×

アレクサンドリアはこんこんと説教されていた。

「長いこと番が見つからないから、やけ酒して泥酔していたとはいえ、一度目の初夜とも言われるのです。人前で証を付けるなんて!」
もう済んだことなので取り返しがつかない。

そんなことよりセレイアに会いたい。
なんせ自分の可愛い可愛い番だ。

「あれからセレイア嬢はどうしている?」
「寝込んでいるらしいです。大勢の前でけがされたので」
「言い方!気を付けろよ」

アレクサンドリアは説教の途中だが、出掛けることにした。

「殿下どこに?」
「決まっているだろう」

結構な高さのある、お城の窓から飛び降りた。
アレクサンドリアは金の竜になり飛んでいった。

「殿下の阿呆――!」

(聞こえているぞ)
臣下が放った悪口、そんなことはどうでも良かった。