竜の番の婚約騒動。制約魔法で好意が示せません

セレイアはハンカチを濡らして、アレクサンドリアの鼻血をぬぐっていた。

「すまない、セレイア。興奮してしまって」
「大丈夫ですか?」

セレイアは眉を下げながら笑う。

「ああ、笑っても可愛いのだな……」
「恥ずかしいです」
「今まで気が付かず、すまなかった」
「いえ、殿下は悪くありません」

見つめ合う二人。


『番だから優遇されるなんて、そんなの許せないわ!』


いきなり女性の声がした。
曇った鏡のようなものが浮かんでいる。
ぼんやり誰かが映っているが判別はできない。

『うふふ、今度は体が臭くなる魔法をかけてあげる!』

相変わらず地味に嫌な魔法だ。
アレクサンドリアがセレイアを庇う。

「殿下!!」

アレクサンドリアが中指に嵌めた指輪を鏡にかざす。

『なにっ?! ちょっ、う゛っ!』

曇った鏡が消える。

「一体どうしたのでしょう?」
「ああ、この指輪で魔法を跳ね返したんだ」

聞けば、指輪は魔法を倍にして跳ね返すらしい。

「今頃、アイツの体臭は……うん、やめようこの話」

アレクサンドリアは明らかにげんなりした様子だ。すかさずセレイアは話を変えようとする。


「そんな便利なものがあるのですね?」
「王族は命を狙われることもあるからね。そうだ、セレイアのも作ってもらおう」
「良いのですか?」

「良いに決まっているよ。未来のお妃様だからね」

アレクサンドリアは跪いた。セレイアの黒髪に口付け、笑う。
セレイアもほほ笑み、頷いた。

「殿下、大大大好きです!」

今まで言えなかった分も含めて気持ちを込めた。
そしてセレイアは甘い香りに包まれた。