竜の番の婚約騒動。制約魔法で好意が示せません

竜の運命の番は甘くて良い香り。
出会えばすぐにわかる。
雄は雌に噛み付いて証を残す。


今日はセレイアの番探しデビューの日だ。
まずは王族から貴族まで集まる夜会に参加する。それでも見つからなければ、次は商会の主催する夜会、その次は平民の集まりなどになる。

「ドキドキします」
と言っても引っ込み思案で大人しいセレイアは壁の花になるのがオチなのだが。

(はぁ、もう帰りたいです)

楽団の優雅な音楽を聞き流し、豪華な軽食コーナーの前を通り過ぎて、番探しをしなければならない。

例外もあるが番は同い年ぐらいであることが多い。
(十六歳くらいの男の人いるかな?)
場所を移動しようとするセレイア。

いきなり後ろから手を掴まれる。
振り返ると美形で大人の男性がいた。
甘い香り。荒く息があがる。

(あなたは!!)

セレイアは首筋をかぶりと噛まれた。

「えっ?!」

意識が朦朧としてくる。二人とも倒れ込んだ。

「殿下ぁぁ――!」
「きゃぁぁ!」

会場に叫び声と悲鳴がする。
セレイアは意識を手放した。