ひゅー。

 夕方になって、きゅうに風がつよくなった。

 はっぱの上でいねむりをしていたぼくは、あっという間にはっぱから落ちてしまった。

 気がついたら、ぼくはおとこの人がしょっているリュックサックの上にいた。

 リュックサックはときどき、おとこの人の背中で大きくゆれた。

 そのたびに、ぼくはふり落とされないように、ぎゅーっとしがみついた。

 おとこの人は、電車にのった。

 ぼくはリュックサックのポケットの中に入り、顔だけ出して外を見ていた。

 びゅーん、びゅーん、外のけしきがとんでいく。

 やがて、外はまっ暗になった。

 おとこの人は山の駅で、電車をおりて、それからバスにのったんだ。

 ガタガタガタガタ、バスは夜の山みちをどこまでものぼっていった。

 バスがゆれると、おとこの人も、リュックサックも、ぼくもゆれた。

 夜が明けるころ、おとこの人はバスをおりた。空には星がいっぱいかがやいている。