あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

「やっぱり一筋縄では行かないか。結構勇気出したんだけど」

いつものように鉄壁の笑みを浮かべる。

「理由があるんでしょ?こんな事を急に言うタイプには見えないです」

牛丼屋から出ても隣を歩く彼に再度話を振ると鉄壁を崩す意外な苦笑いで「困ってるんだよ」とポツリと話し出した。

「まあ今の状況が面倒と言うか周りがちょっとね」

「マネージャー…モテますもんね」

「ははっ。それはチーフも同じ」

彼は私の比じゃないくらいモテる。
館内を歩こう物なら女性と言う女性は彼を追いかけ回すだろう。

「はっきり言えないこの環境もきつい」

海外帰りの彼からすると環境の違いと毎日近寄ってくるお花達にうんざりらしい。

「お断りしてるんだけどね」

でも色んなハラスメントが頭をよぎって簡単には跳ね除けられないって事か。

確かにハラスメントは相手の取り方次第で解雇や裁判にだってなりうる。

「なぜ私ですか?他にも助けてくれそうな…あっ、見たんですか?個人情報を」

「それは…本当にすまない」

私の両親は10年前に事故で他界してる。
育ててくれた祖父母も3年前と5年前に。
ましてや私には兄弟もいない。

(結婚も離婚も簡単と思われたわけか…)

「結婚願望ゼロなんです。自力で生活出来ますし」

地下鉄に乗る為に階段を先に降りる。