あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

「えっと…おばあさんの荷物を持って上げたらここだけの話って言われて…運気が最強になるって言われたんで買ったんです…が?」

奏と彼は苦笑い。
あれ…何か間違えてる?

「今度買う時は僕にも相談してね、奥さん」

「じゃあ」とお花の彼にまとわりつく受付嬢にも同じように告げて社食を出て行った。

「それいくらしたの?」

「そんな高く無いよ。3万円ほど」

お守りを大事にポーチに戻した。

「そりゃあ旦那さんもあーやって言うよね。神頼みまで…。珠子はそんなに結婚終わりにしたいの?」

「終わるもなにも始まってもない」

気持ちとは裏腹で嘘で固められた関係は長く続くとも思えない。
一年前のあの牛丼屋さんは今や恋人達のパワースポットになり一時期噂のおかげで繁盛したらしい。


◇◇◇

思い返せば一年前


「藍沢チーフ結婚しないか?」

綺麗な所作で食べる牛丼は優雅で彼の周りだけ高級レストランのよう。
お茶ですら高級ワインに見えてくる。

「冗談です?全然面白くないですよ」

お味噌汁をすすると暑くなってシュシュで一つに髪を束ねると背後の男性二人が「エロいな」と話してるのが分かる。

「あぁ言うの疲れない?」

彼の“あぁ言うの”とは背後の話だと思う。

「慣れました。マネージャー指輪汚れますよ」

カウンターテーブルに置いた有名ブランドの物だと分かる淡いピンクの箱から高そうな指輪が顔を出してる。

本当は喉から手が出るほど欲しい。
彼を密かに好きで恋心だってある!
プロポーズだって本当なら涙流して喜んで受けた。

(本当なら…ね)

私は彼を好きだけど彼は違う…理由がある。
何度も言うけどうちらは上司と部下であって付き合ってない。