あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

「別に?」

何も変わるわけない。

一応、旦那である一ノ瀬 大輝(いちのせ だいき)を一言であらわすと眉目秀麗。
3年前海外の有名デパートから手腕を買われて社長直々にヘッドハンティングして来た出来る男。
それから途中入社した彼は瞬く間に実績を上げ今の地位を確固たる物にした。
そして今では蘇芳四館(東西南北)を束ねる統括マネージャー。

(…隙がない)

そんな彼は優しい笑みを崩さない事から【鉄壁の貴公子】と周りは騒ぐ。

「強いて言えば指輪くらい?」

左手に光っている結婚指輪だけは既婚を語っている。
西館の花凜チーフが前に言ってた“熊とはちみつ”の名言を思い出した。

結婚指輪はときに甘い蜜になるらしい。
禁断の果実といった所なのかも。

「珠子が不憫に思えてきた」

奏さん…顔めっちゃ笑ってますよ?

「ぜーんぜん!徳を積んできたし…見て!!」

今の私は最強とお守りを取り出すと、

「今回チーフは何を買ったの?」

背後から綺麗な指がお守りごと私の手を取り不思議そうな顔して覗き込んで来た。
この少し長めの前髪から見える瞳に女性達は心を奪われるらしい。

「チーフとマネージャーよ!お似合いだわ」

それ毎日のように言われてます…。
一年前からずーーーーっと!

「ほんとお似合いのご夫婦!」

私達は理由があって一年ほど前から結婚してる。
大きな声では言えないけど俗に言う【契約婚】いや【多分婚】と言うやつです!

多分て何?て思う人も居るかも知れないけど多分は多分…

(なのに距離近い…)

彼にも周りの声が聞こえてるんだろう無駄に距離感がバグってる。