あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

噂の内容を聞いた私は足早にインフォメーションに向かう。
そんな状況で螺旋階段を優雅に降りて景色を見る気分ではない。

おば様達から聞いた話はこうだ。

「昨日社員用通路から出たら見たのよ〜」

今度開催される全国物産展の打ち合わせを終えた私は2人のおば様に引き止められた。

「何を見たんですか?」

またお得意のしょうもない噂かと適当に地下の漬け物コーナーで今日の晩酌のあてを物色する。

「あのインフォメーションの子よー!可愛いけどツンとした子いるでしょ?」

「そうそう!愛想ない子よー」

ツンとした…
まさか…また中原さん?!
物色をやめておば様達の噂を確認する。

「前髪がこうパッツンと揃えてて黒髪のストレートの子ですか?」

彼女はパッチリとした目の綺麗系な顔立ちの子でパッと見はツンとしてるように見えるかも知れない。

「間違いないわ〜。その子が茶色のこう短い髪の俳優さん見たいなイケメンと揉めてたのよ」

「あら〜!イケメンなら一ノ瀬マネージャーの方が上じゃない。珠ちゃんもモテる旦那持つと大変ね~」

100%確定ではないが末廣さんだろう。
どうでも良い旦那を褒めたたえる話を散々聞かされて私もとうとう本人に話を聞きに行く事にした。

「あれは何かあった感じよね〜」最後に聞いたおば様達の嫌な言葉が頭を過る。

チクチクと胃が痛む。
先に胃薬飲むべきだったかと後悔したけどそんな暇はない。
彼女と話す方が優先でこれ以上の噂は周りの目にも彼女の今後にも良くない

「あの子か…」

3m前のインフォメーションに3人の女の子達が座り1人は電話を取り1人はお客様対応をしている。
見た目的にこの子と狙いを定めてカウンター越しに彼女の前に立った。

「お疲れ様です」

静かな物言いと無に近い表情の彼女は白い帽子の鍔から大きな瞳を覗かせた。

「お疲れ様。あの少しお話出来る?」

胸元の白い薔薇をモチーフにしたコサージュと一緒になっている小さなネームプレートにイニシャルのM.Nの文字。

中原美颯さん。

「もうすぐ引継ぎ時間ですので後でも宜しいですか」

時計を見ると17時を過ぎてる。
引継ぎ時間を考えて18時に社員用のカフェルームで待ち合わせをした。



「お待たせ致しました」

制服での佇まいでもお嬢様と感じたが私服の彼女もブルーのアンサンブルに膝丈の白いフレアスカート。
お嬢様度がアップする私服。

「忙しいところごめんなさいね」

正直この子が不倫?!と疑いたくなる。
ただ何も知らないお嬢様が燃え上がって…?と言うパターンもあるので彼女の一言一句目に焼き付ける。