あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

止まらないキスは唇だけでは我慢出来ず首筋を沿う。

「あっ…」

久しぶりに出た声に口を自分の手の甲で押さえた。

「珠子、全部聞きたい。全部知りたい」

彼の掠れた声に自分の脳が覚醒する。
お風呂上りとお酒で火照った身体に空気それに混ざり合う温かい息。
押さえていた手は意味をなくすくらい声を上げてた。

「…もぅ、マネージャー無理」

一方的に繰り返される愛撫と甘い言葉に息も出来にくい

「マネージャー…?名前を呼ばないと」

「やっ…んん…ダメ!」

身体中に電気が走る感覚と震えに両足の間から見せる彼の顔は妖艶過ぎて私に付けられた“艶麗”を彼に捧げたくなる。

「珠子、まだ呼べない?」

私の両足を抱え彼の圧を押し付けてくる。

(無理…)

自分でも堕ちるのが分かる。

「だい、大輝さん…お願い」

たどたどしいと自分でも分かる。

「俺も限界。ずっと待ってた」

勢いよく奥を付かれ首筋を揺れるネックレスが目に入り嬉しさと彼の汗を感じながら身を任せた。


◇◇


「最近、藍沢チーフ肌ツヤ良くなってません?前は何か死相が出てる感あったんですけど」

最近の若者、蓮池さんは目ざとくてそして軽く失礼。
確かに一緒に寝てるし加減を知らない彼は遅番シフトと分かれば朝まで愛を捧げてくる。

「はいはい。仕事して」

私も嫌じゃないから質が悪い。
周りには1年も何も無かったなんて分かるわけないんだから言葉に反応するのも変なのに意識はしてしまう。
そんな彼も一週間のマレーシア出張に旅立ってしまった。

「あ、花凛(かりん)チーフ探してましたよ」

花凛チーフは西館のチーフで来年リニューアルを控えてる。
彼女は2期後輩で真面目な頑張り屋タイプ。
初めてのリニューアルで心身共に疲れてるところだと思う。

「ありがとう。連絡してみる」

「それと…ちょっと噂を聞いたんですけど…」

「えっ」耳を疑うような噂の内容に不安を感じつつもまずは花凛の居る西館に急いだ。



「この新規店舗リストを私にメールちょうだい。裏取りと確認してみる」

花凛からのヘルプ内容は来年新規参入する海外企業の店舗状況の悩み。
一番目玉の西館入口近くに新進ブランドの店舗を大々的に出すらしい。
アジア発、ヨーロッパでも3店舗目を出店したブランドだがデータと事実が違うんじゃないかと心配している様子。

「フランスのバイヤーにちょっと探りを入れて…ダメそうなら早めに手を打とう。一応イタリアのバイヤーに私から連絡しとくから…保険掛けとこう」

一社に絞るのは危険、二の矢、三の矢が必須。

「藍沢チーフも忙しいのにすみません」

珍しく弱気な花凛の肩をバシッと強めに叩いた。

「花凛、私はあなたの何ですか?」

「尊敬する先輩です」

「そう思ってくれるなら、たまにはお世話を焼かせて欲しいの。一人前になるのが早いと私も寂しいもん」

微笑むと花凛は俯きがちの顔を上げて「よろしくお願いします」と笑みを浮かべた。

ヴーーーッ、ヴーーーッ

「部長からだ…花凛また連絡お願いね」

「本当にありがとうございました」

微笑みあって東館上層部に続く連絡橋に急いだ。