「いらっしゃいませ。ご予約の一ノ瀬様ですね」
三ツ星…レストラン
奏がこの間行ったって話してたお店だ。
確か旦那さんの友達のお店で味は三ツ星通り越して五ツ星て言ってた。
「こちらの席にどうぞ」
レストラン内は比較的こじんまりと見える。
白ベースの壁に所々にレンガがはめ込まれ照明は柔らかいオレンジ色が店内を優しく照らしてる。
高級を売りにする感じでは無く椅子に淡い黄色を使ってたりと創作フレンチって感じかも。
席数も見る限り5卓ほどしか無い。
席の間隔は広く周りの目も話し声も気にならない。
「珠子、嫌いな食べ物ある?」
一緒にご飯食べる事が少ないからお互い好き嫌いが謎。
「無いんですけど…内容が分からず…」
メニューリストを見ても何が良いのか分かんない。
うずら…鴨…
「お勧めで頼む?」
「そうして下さい」
その後も彼はワインリストを見てはフランス人らしきソムリエと話して楽しそう。
大学時代に海外留学から海外の高級百貨店に入社して20代はほぼ海外生活だった彼は語学堪能。
色々覚えてはいるのに私への記憶がまだ戻らない。
最初は色々病院を探して連れて行ったりしたんだけどな…
漢方…サプリ…何も効果無し。
階段から落とす?
それは犯罪‼
そして今は神頼みになってる。
「どうした?」
ふふっと笑って「どうやったら記憶が戻るのかな~て」少しおどけて見せる。
「そんなに戻って欲しい?俺は珠子との今が楽しいから良いんだけど」
ははっと笑って見せてくれる。
一年間、形だけの夫婦を過ごした。
ずっと秘密だけど私の彼を好きな気持ちは膨らみ続けてる。
「私、幸せですよ」
勇気を振り絞って少しの本音。
「なら今は記憶とか考えるのやめよう」
食前酒で彼が頼んでくれてた白ワインで乾杯をする。
「あ、これプレゼント」
いつぞや見た高級ブランドの包みをテーブルに置いた。
「ありがとうございます。嬉しいんですけど…私、プレゼント買ってないですよ」
結婚記念日?
一緒に祝えるとは思ってもみなかった。
「来年楽しみにしとく」
来年と言うのは私とまだ居てくれるって事。
私にもそれはプレゼント。
「任せといて下さい!凄い物を考えますから」
「東館チーフの任せては心強い」
白ワインとアミューズ(チーズといちじくのサンド)に舌づつみ。
「美味しい…」
アントレ(前菜)に海老のビスク!
素材も感じて本当に美味しい。
「珠子って本当に美味しそうに食べるよな」
鴨のフィレ肉にカシスソースを絡めて食べてると笑みを浮かべた彼と目が合った。
「がっつきすぎ、ですかね?」
美味しくてナイフとフォークが止まらない。
滅多に食べる事出来ないし!
作るとか絶対無理!
「全然!もっと食べた方が良いよ。俺たち食べれない時もあるし不規則だから」
年齢考えて食生活も考え直さないと。
今は太らなくてもこれからは分からない。
「お互い30代ですし気をつけますか」
ふふっ、ははっと笑ってお酒も進む。
最高な赤ワイン(シャトー・マルゴー)1996年物を頂き最後は大好きなエスプレッソで最後を締める。
「幸せな時間でした。ご馳走さまでした」
代行を使って自宅に到着したのにお風呂上りにまたビールで乾杯!
お互いお酒は強い方だから飲みだしたら終わりにするのが難しい。
「プレゼントも…」
プレゼントの中身は結婚指輪と同じブランドのインペリアルトパーズとダイヤの二連リングの付いたネックレス。
「後ろみて」
酔いも回りお互いテンション高め。
ソファに座ったままクルっと彼に背を向けて髪を右に寄せた。
「俺酔ってんな」
中々上手く付けれないのか指がちょこちょこ首筋に当たる。
「くすぐったい!ふははっ」
「ごめん!あっ、ほら」
無事装着完了!
「綺麗…」
酔ってても綺麗な物は綺麗。
指でトパーズを触って振り返り、
「ありが…っ」
最後まで言わせて貰えず唇に彼の柔らかい唇の感触を受けてた。
驚いて目は見開いたまま彼の綺麗な肌を間近に感じて恥ずかしい。
「珠子めっちゃ真っ赤」
少し離れた顔がいたずらっ子みたいにニヤリと笑う。
「そりゃビックリし…っん」
また口づけて言葉を遮りどんどん深くなる。
“お酒と雰囲気のせい!”と言い訳をして身を預ける。
「ちょっと可愛すぎ」
いつもは別々の部屋なのに今は彼の部屋のキングサイズのベッドに寝かされてる。
「可愛くはないですよ…」
間接照明を背に私に向ける顔がいつもより男性を感じる。
お互い素の自分をさらけ出して角度を変えつつキスをする。



