あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

ん?

「この人…確か」

男女グループの写真に見た事あるような女性を見つけた。

誰かは思い出せない。
私とは真逆の純和風美人な女の子。
別のページの集合写真も隣に写ってる。

「どこかで…」

彼の元カノさんだとは思う。
プライベートらしい仲間内の写真にも隣にいる。
過去は私にもあるんだから気にしないけど見知った顔が気になる。

「懐かしいわね。ちせさん達じゃない。仲良くて大学も一緒だったのよね」

ちせさん…
名前に記憶は無い。
似た人なんて何処にでも居る。
私はそんな風にこの事はスルーした。



「夕飯食べて行けば良いのに」

「俺らだって予定あるんだよ。また来るから」

車に乗る直前まで名残惜しそうに言ってくれる。
築100年以上を感じさせない門構えの前でご家族に帰らせてもらえない。

「あなたに言ってるんじゃないの。珠子ちゃん嫌な事されたらすぐうちにいらっしゃいね」

「嫌な事って…言い方変だろ」

「すぐお邪魔します」

「珠子!勘弁してくれよ~」

結局30分近く話して車に乗れた。

「ところで何処に行くんですか?」

高級ハイブリッド車の乗り心地は最高なんだけど行き先は気になる。

「来週、俺は出張で居ないんだよ」

そう言われてなんと答えれば良いの?
出張は前から有るし今まで一人だったし“寂しい”と思うほど私は若くはない!
頷いてやり過ごす?
いや適当に流そう!

「出張に持って行く物買いに行きたいんですか?」

ふふっと笑って適当に適当に!
あっ、多分違う。
眉間に軽くシワを寄せてるし。

「結婚記念日、来週だろ?」

結婚記念日…もうそんな時期。

「あっ、そうか」

って事は年末が近くて忙しくなる。

「忙しくなりますね…今年東館は地下の物産展に力を入れ」
「珠子、俺は仕事の話をしてるんじゃないよ」

話の腰を折られて続く話を黙って聞く事にする。

「結婚記念日の前祝いをしようかと。レストラン予約してるんだ」

「レストランですか…あのドレスコード」

今日は完璧なオフ使用でいつものカッチリでは無い。
オフホワイトのロングニットに黒のスキニー。
コートは一応持ってるけどオシャレとは言い難い濃いベージュのトレンチコート。

「大丈夫。俺だって変わらないよ」

ははっと笑うけど黒のジャケットに薄手のトップス。
カーキー色のパンツ。
確かに普通の色味ではあるけど素材がハイブランド…腕時計も有名ブランド。

「違い過ぎる」

「これから行くお店は大丈夫」

いつものように頭を撫でるから狭い車内に聞こえるんじゃないかと思えるくらいドキドキする。

「着いたよ。橘チーフご推薦と言うのか安見(やすみ)の」

安見…あぁ奏の旦那さん。
理由があって別居中だけど…蘇芳のとVIP(常連様)

「知ってるんですか?」

「安見?知ってるも何も株、まぁ良いか。高校と大学一緒」

初めて聞いた意外な交友関係。
「入ろう」彼にエスコートされて出された腕に手を絡めた。