あなたの記憶が寝てる間に~鉄壁の貴公子は艶麗の女帝を甘やかしたい~

(可愛い…)

いつもキッチリとスーツに身を包み笑顔を振りまいて本当は凄く気を使っているんだと思う。

優しく額に触れて邪魔そうな前髪をサラッと横に流すとくすぐったいのか気持ち良いのか頬に寄せてた自分の手をお腹部分に置いて本格的に寝てしまいそう。

(部屋で寝かさないと)

「ここで寝ちゃダメですよ」

私の声が届いてるのか「うーん」と言うとまたスーッと寝息をたてる。

「マネージャ…うっ」

私が軽く肩を揺するとそのまま腕で身体を押さえ込まれた。
温かい…
安心感に強い腕が苦しいとは思いながらもなぜかホッとする。

「くっ…だ、だいき…さん」

ついつい出た彼の名前に自分が一番驚いた。
安心と人の温もりって怖い。

「…やっと名前聞けた」

「マネージャー起きてたんですか!」

「今覚めた。あぁ~、またマネージャーだし」

軽く目を開けた彼は私と視線が会い微笑んでもっと腕に力を込める。

「名前呼ばないと離さない」

「そんな…」

「このまま寝る?俺は構いませんよ奥さん」

余裕がある人は違う!
仕事なら負けず嫌いなんだけど恋愛は絶対的に敗者…

「大輝さん‼これで許して下さい」

恥ずかしい!
職場で見せないお互いの素の姿。
顏が熱い!

「ちょっとそんな赤くなるなよ…俺もうつる!」

強かった力が弱まり彼を見上げると顔が赤くなってる。
いつもは見せない姿に見つめあってお互い笑いあった。


◇◇


「珠子ちゃんお久しぶり」

「ご無沙汰しております」

アパートに寄り大家さんへ挨拶をして使える荷物の選別して運ぶ手配を業者に頼み部屋の解約手続きも済ませた。
長年住んだアパートは取り壊す事にしたそうで少し寂しくなった。

「ちょっと寄って良い?」

そして来たのは一ノ瀬家。

「やっと一緒に住むのね。嬉しいわ」

一ノ瀬家は不動産業を営んでる。
国内でも有名な不動産会社で跡継ぎには今海外に住んでるお義兄さんが継ぐらしい。
彼は実家に入るつもりはないと聞いている。

「やっとって。別に自由だろ」

「そうだけど、ね~。お義母様」

「そうよ。いつ珠子ちゃんが逃げちゃうかと心配で」

おばあ様とお義母様は手を叩き合い喜んだ。

「すみません。転がり込む形になってしまって」

アパート水浸しの件も話した上で頭を下げた。
そんな私を2人は抱きしめて「辛かったわね」と背中を撫でてくれる。

本当に温かいご家族。
身体の温もりが彼と同じ気がした。



「これ、5歳の大輝ね」

アルバムの中には幼稚園の制服に身を包んで面倒そうな彼と周りには女の子達。

昔からモテてる。
幼いながらも顔立ちが整っていて可愛い。
そりゃ女の子も黙ってない。

「恥ずかしい物見せるなよ」彼はそう言ってお義父様と近くのゴルフショップに連れ出されてしまった。

「これは高校時代ねー。新しいお茶淹れるから見てて」

「お気遣いありがとうございます」

お義母様はキッチンにお手伝いの方と消えて行った。

「高校時代にもなると今の彼だなぁ」