「あっ、乗ります。少し待って貰えますか?」
エレベーター前に先客あり。
少し小走りで急ぎ軽く会釈と崩れた化粧を隠すように笑みを浮かべエレベーターを待つ間下を向いた。
「藍沢チーフですよね!俺ら憧れてるんです」
「あ、ありがとうございます」
真新しいカタログを持つ二人は「今年入社したんです」と元気よく話しかけてくれる。
「そうなんだ。色々大変だろうけど頑張ってね」
「蘇芳のパンフとか拝見させてもらいました。会える事なくて…本当に存在してるんですね!」
宇宙人、ネッシー?ツチノコ?私そんなレベル⁈
「存在…普通に東館にいるよ。ふふっ」
新人さんてキラキラすぎる…
眩し過ぎる!
「こんな機会もう無いと思うんで。…今度飲み会とか誘っても良いですか?仕事の話とか色々聞かせて欲しいです」
飲み会に誘ってくれる!?
遠巻きに見られる事が多い人生だったからストレートな誘いは珍しい。
それに仕事の話聞きたいとか勉強熱心。
「全然良…い」
「それって俺も参加して良いのかな?」
新人君達は興奮してたのかエレベーターの開を押したまま。
「一ノ瀬統括マネージャー!お疲れ様です」
誘いの会話が丸聞こえで背後からの声に身体がビクッと動いた。
「お疲れ様」
いつもより低めの声のトーンに後ろを振り返ると真逆のいつもの笑顔。
「さっきの話、さすがに奥さんだけ参加はね」
言葉と言うか圧のある満面の笑みが謎すぎる。
「奥さん?!いやあの知らなくてすみません!!!俺らは階段使うんで、あの失礼します!!!」
「えっ?階段てもうエレベーター!」
凄い勢いで去っていく新人君達に声は届かず背中を押されて私はエレベーター奥に押し込まれた。
「あのさ、珠子には危機管理能力を鍛えて貰いたいな」
彼は「はぁ…」とため息。
「危機管理ですか?」
十分大人なんで普通にあると思うんだけど…
顔、スタイルは都会育ちのイメージ。
実際は地方の田舎出身だから少し危機管理は薄い方かも。
「さっきのはナンパだと思うよ。…おばさんのお守りくらいなら許せるけど」
「仕事の話って…」
ドン!!!
壁に手を背後から突かれて身体が震えた。
壁ドン?!
振り返ると間近に見えたマネージャーの顔にまた身体が震える。
「な、ななな…何?!周りから、」
「誰もいないよ」
先に言われて一瞬考える。
「これセクハラ、パワハラ?じゃ…」
「旦那を訴える?」
訴えるも何も近くでこんなに見つめられては言葉が出ない。
フッと目を細めて私の纏めた結び目から出ている後れ毛に触れ私を解放した。
「あの…」
「俺に話す事あるよね?」
話す事…
今この状況で話す事なんて思いつかない。
「階に着いたんで…どいて貰えますか…?」
エレベーターの階を告げるアナウンスと同時に彼をすり抜けて急いで飛び降りた。
「電話する」
鉄壁の貴公子が微妙に不機嫌そうに発してエレベーター閉まった。
「話?電話?…記憶が戻った…?」
まあ…それはいつか戻るわけで寂しいけど仕方ない。
「痛ッ…ビールはやっぱりやめとくか…」
胃がキリキリ痛むのを今日のスケジュールで紛らわした。
エレベーター前に先客あり。
少し小走りで急ぎ軽く会釈と崩れた化粧を隠すように笑みを浮かべエレベーターを待つ間下を向いた。
「藍沢チーフですよね!俺ら憧れてるんです」
「あ、ありがとうございます」
真新しいカタログを持つ二人は「今年入社したんです」と元気よく話しかけてくれる。
「そうなんだ。色々大変だろうけど頑張ってね」
「蘇芳のパンフとか拝見させてもらいました。会える事なくて…本当に存在してるんですね!」
宇宙人、ネッシー?ツチノコ?私そんなレベル⁈
「存在…普通に東館にいるよ。ふふっ」
新人さんてキラキラすぎる…
眩し過ぎる!
「こんな機会もう無いと思うんで。…今度飲み会とか誘っても良いですか?仕事の話とか色々聞かせて欲しいです」
飲み会に誘ってくれる!?
遠巻きに見られる事が多い人生だったからストレートな誘いは珍しい。
それに仕事の話聞きたいとか勉強熱心。
「全然良…い」
「それって俺も参加して良いのかな?」
新人君達は興奮してたのかエレベーターの開を押したまま。
「一ノ瀬統括マネージャー!お疲れ様です」
誘いの会話が丸聞こえで背後からの声に身体がビクッと動いた。
「お疲れ様」
いつもより低めの声のトーンに後ろを振り返ると真逆のいつもの笑顔。
「さっきの話、さすがに奥さんだけ参加はね」
言葉と言うか圧のある満面の笑みが謎すぎる。
「奥さん?!いやあの知らなくてすみません!!!俺らは階段使うんで、あの失礼します!!!」
「えっ?階段てもうエレベーター!」
凄い勢いで去っていく新人君達に声は届かず背中を押されて私はエレベーター奥に押し込まれた。
「あのさ、珠子には危機管理能力を鍛えて貰いたいな」
彼は「はぁ…」とため息。
「危機管理ですか?」
十分大人なんで普通にあると思うんだけど…
顔、スタイルは都会育ちのイメージ。
実際は地方の田舎出身だから少し危機管理は薄い方かも。
「さっきのはナンパだと思うよ。…おばさんのお守りくらいなら許せるけど」
「仕事の話って…」
ドン!!!
壁に手を背後から突かれて身体が震えた。
壁ドン?!
振り返ると間近に見えたマネージャーの顔にまた身体が震える。
「な、ななな…何?!周りから、」
「誰もいないよ」
先に言われて一瞬考える。
「これセクハラ、パワハラ?じゃ…」
「旦那を訴える?」
訴えるも何も近くでこんなに見つめられては言葉が出ない。
フッと目を細めて私の纏めた結び目から出ている後れ毛に触れ私を解放した。
「あの…」
「俺に話す事あるよね?」
話す事…
今この状況で話す事なんて思いつかない。
「階に着いたんで…どいて貰えますか…?」
エレベーターの階を告げるアナウンスと同時に彼をすり抜けて急いで飛び降りた。
「電話する」
鉄壁の貴公子が微妙に不機嫌そうに発してエレベーター閉まった。
「話?電話?…記憶が戻った…?」
まあ…それはいつか戻るわけで寂しいけど仕方ない。
「痛ッ…ビールはやっぱりやめとくか…」
胃がキリキリ痛むのを今日のスケジュールで紛らわした。



