端野家は代々、松野家の護衛を務めてきた。
その6代目当主がこいつ、
端野大河こと東堂大河。
俺の本名は端野藍(はしのあい)
母がつけた名前だ。
父は母のことが気に食わなかったらしい。
そして、俺のことを罵り、一人前なんてなれないと
まだ中途半端な蛹と呼んだ。
蛹、蛹と。
そして、弟。
大河に対して優しいわけではなかった。
父はまた、大河につけた。
自分のように完璧にできるはずなんてない。
お前は未熟、蕾なんだと。
一生咲かない、腐った蕾だと。
弟はそれを聞いても何も言わなかった。
一言、わかりましたとだけ言った。
その彼を気に入ったらしく、
父は弟を、大河、いや蕾を当主にした。
父は相当頭の切れる人だったらしいが、
性格がめっぽう悪く、自分の言うことを聞かない人
自分の言うことに従わない人、気に入らない奴は
全て端野家から排除していっていた。
そして、数年前、暗殺された。
弟は東堂家に頻繁に出入りしていた。
母はヤクザと再婚して、
いまだに水商売をしているらしい。
見ている限り、相当貧乏だっただろう。
そして、きっと東堂結奈は
俺たちの“妹”だ。



