だめっ、たまんない。





なんて語ってるうちにまつのの家とはかけ離れた


うちのおんぼろアパートについた。



東堂の表札が見えた。



東堂結奈、偽名じゃない。

私は正真正銘、東堂結奈だから。


でも、私には戸籍がない。

できちゃった婚の母は、私を産んだ。

ただ産んだのだ。堕ろすことができないから。



ほんとにただ生まれてきただけの

私、東堂結奈は調べても何も出てこない。


それはそうで、父はヤクザだし。

母は偽名使いまくってパパ活とか、水商売してて。

私には戸籍がなくて。


あと、中澤から教えてもらったことがもう一つあって。



ハッキングなんだけど。


それを使って私はまつのに情報がいきにくいようにした。


私はまだまつのといたい。


まつのに嫌われたくない。


誰かの目にうつりたい。


それだけだった。


実家に帰ってきたのは中澤にもらったパソコンやらを回収するためと、父たちに一言伝えるため。


きっと聞いてもくれないだろうけど。

そう思ってドアノブに手をかけた私の肩に誰かの手が触れた。