だめっ、たまんない。




結奈を引き取って早3日。


結奈の行動、言動(声は出さないが)をひたすら観察していた。

彼女はおかしい部分がたくさんあった。


まず、声を出さない。でも、出せないわけじゃない。


何か話しかけても、はい。いいえ。でしか答えない。


まるで下僕かのようにぺこぺこ、ぺこぺこ頭を下げる。


そして、怯えた目。



これは彼女なりの警戒なのか、


それとも、これらはすべて




“演技”なのか。




「なあ、学校、行かなくていいのか。」



あ、の口で固まる結奈。



これは忘れてたな。



「わかった。16って言ったよな。

結奈、高校行ってるか?」



「(コクコク)」



千切れそうなほど首を上下にふる結奈。



俺をじっと見つめたと思ったら珍しく、紙とペンを持ってきてさ。



[まつのさんって、お金持ちなの?]


「そうだよ。俺は、御曹司だ。わかる?御曹司。

あと、さんはいらない。同い年だからな。」


うんって。頷く彼女。

言葉はよく知ってるんだよな。


簡単な言葉はもちろん、

コアな知識まで。


[明日、ちょっとあけてもい?]


何かを書いてる時も、頷いてる時も無表情な結奈からは何もわからない。


プロのポーカーフェイスマンだ。


これも演技なのだろうか。


疑い症の俺は、どんどん良くない方にいってしまう。


人を信じることを恐れた俺は、いい社長になんかなれるはずない。


「いいけど、どうかしたのか。」

[どうかしたわけではないけど、]


固まってしまった結奈。


「いいよ。結奈。行っておいで。」


[ありがとまつの]


ぴょんと跳ねて部屋を出ていく彼女を見て、

思わず頬が緩む。


「仁。どうかしたのか。」


後ろから足音もなく近づいてきたのは、俺の側近。


「なんでもない。蛹(さなぎ)」


「いいのか。あの女。

ずっと置いておくつもりか?

あいつは何を考えてるのかわからないし、まだ身元もわかってない。」



「え、東堂結奈だ。

名前は言ったはずだが。」



「出てこないんだ。


東堂結奈、それは本名か?


彼女は明日、どこに行くんだ。つけるか?」



「、、。お願いしたい。」


やっぱり信用できない。


人を信じれない。