「ねー、クソビッチ?」
ゆなちゃんはやっぱり、外から見ても若かった。
私はもうすぐ高校生。
普通ならば親は50歳前後。
しかし、ゆなちゃんは元から童顔なのもあるが
下手したら20代にも見える。
だから、オトコヲトッカエヒッカエしたんじゃない?
らしい。
わからなくもないがそういう知識は無かった。
ただわかるのは、父親はどこかにいる。
「ねぇ聞いてんの?」
ブチッ。
今まで我慢していた分が全て弾け飛んだ気がした。
「あぁ?黙れよ、ゴミカスが。」
でも、その言葉とは裏腹に私が浮かべていたのは
笑みだった。
鞄を持ってそのまま学校を出る。
厳重注意だ。絶対怒られる。
そんなことどうだって良かった。
でも、この時、出ていってよかったと今では思う。
苛々する。
家に帰ってパンチングミットでも殴ろうと思ってた。
頭をぐしゃぐしゃとかき回しながら歩いていた。
私がいつも通る裏路地に、
真昼間から喧嘩をしている奴らがいた。
でも、苛々していた私は
その横を通っていこうとした。
なんで、こっちが避けないといけない?
今のマインドでは、避けることなど考えられない。
横を通ると飛んできたのは拳。
パシッと軽く受け止める。
そして、そいつの頭を鷲掴みにし、
近くの壁に投げつけた。
近くにいた奴は襲ってくる気配がなかったので、
放っていこうと思っていた。
トントンと肩を叩かれる。
振り向くと先程の男とは桁違いの
威圧感のある男。
「強いな、君。名前は?」
「聞いてどうするの?」
「どうするつもりなんだろうな。
俺にもわからないよ。」
不思議な男に私は頭を傾ける。
プルプル。
その瞬間に電話がかかってきた。
ーゆなちゃんー
出てもいい?と頭を傾けると
うんうんと頷いてくれた。
歩きながら話していた私たちは気づけばもう
私の家のすぐそばだった。
“あ!こまちゃん?
今どこなの〜!!
学校から電話かかってきちゃってね!
何かと思ったらゴミカスとか言ったんだって??”
怒ると思う?いいや、ゆなちゃんは
“あはははは笑笑!!さいこーこま笑笑
さすが私のこまちゃんだー!!
どうせなら消え去れくらい
言えば良かったのにぃー!”
これがうちのゆなちゃんだ。
通常モード。
“でー?今どこなの?”
「今、喧嘩に巻き込まれて。
色々あって、お兄さんと話してたけど
もう家の近くだよ!
あっお兄さんそういや、名前。」
パッと上を見上げると
「お母さん?」
と優しい顔。
そんな顔もできるんじゃんとか思いながら。
「そうだよ。あのお兄さん。名前は?」
「それ聞いてどうすんのー?笑笑
なんてね。」
「あーーごめんなさいってば。
私は端野狛。はしのはくです。」
この時、端野?という呟きには気づけなかった。
“んー?こまちゃん?誰かと話してるの?
誰なのー?”
「ちょっと待って、名前がわかんなくて。」
困っていると、
「変わってもいー?」
笑顔のおにーさんが話しかける。
でも、信用しきれなくて、
スピーカーオンにした。
「はい。どーぞ。」
“おーい!こまちゃん?聞いてる?”
「こんにちは。お母さん?」



