いつも歩く、とある暴走族の管理地。
こんな危ない所を好んで歩く奴なんていない。
「おい、大丈夫か。」
こんな真っ暗で、治安の悪い路地裏に
誰かいるはずなんてないのに。
ましてや、ほっそい女。
弱そーって、思った。
「こんなことになっちゃったよ。」
彼女は、ふふっと意味深に笑った。
俺が彼女を見つめると、彼女はフッと意識を失った。
驚くほど綺麗な顔の彼女の、
笑った顔が忘れらんなくて。
可愛いなって。
思っちゃったんだよな。
でも、俺はそれから彼女、結奈の声を聞いていない。
丸っこい癖字が、彼女を物語る。
笑顔が苦手らしい彼女の。
あの笑顔は、なんだったんだろうか。
無表情の彼女。
俺も生い立ち柄、話すこと、笑顔をつくることが嫌いで。
苦手で。
でも、自然と湧き出るような笑顔が。
名前を聞いてから、もう、何回呼んだか。
自分に言い聞かせるみたいに、
結奈結奈、結奈って。
俺は彼女の虜だ。



