だめっ、たまんない。



ガチャ。


冷え切った空間の中帰ってきたのは父だった。



「お前達何をしている。」


父の顔を見たことがないらしいまつのは、私を見る。


手からメモ帳を出して書く。



“父です。”


「あぁ、そうか。」



ガチャガチャ。

帰ってきたのは父だけではなかった。


モヒカン頭の怖い男の人や、刺青まみれの人。


私はまたまつのにしがみつく。



「お前、松野か?松野仁か?」


まつのを指さす。

やめてなんて言えない。


私はこの人に逆らえない。



「あっ、うー。」


また頭がジンジンする。

思い出すな。



「あ、ひゅっ、うっ。」


私はまた過呼吸になった。


服を握りしめて、必死で理性を保とうとしてた。


意識が飛びそう。



私と目を合わして、トントンと背中を叩いたまつの。


「大丈夫だ。」



父に向き直ったまつのは、言った。


「松野仁です。

存じ上げないのですが、どちら様でしょうか。」


「お前、俺を知らないのか?」


大変ご立腹な父は今にも飛びかかってきそうだった。


「先程言いましたよね笑笑

存じ上げませんと。」



わざと挑発するようにニヤニヤと笑うまつのからは

殺気が感じられた。


怖いくらい恐ろしい殺気が。


「あぁ。」


部下と思われる人が止めたため、

飛びかかってはこなかった。


電話をしていた部下さんが帰ってきた。


父に耳打ちすると、

父は気持ち悪い笑みを浮かべた。



そして言った。


「松野仁。お前を潰す。」と。



すると部屋の中に、

沢山の大きな男の人が入ってくる。


過呼吸が治った私は必死に息をする。




相手は約20人。


それに対して、こちらは

松野、蛹、蕾さん?、


そして、

母と私と婚約者さん。