「体調悪いか?まだ身体辛いなら無理しないほうが……ごめん蛍、バスの中なのに……」
そう言われてボーっとしていたことに気がついた。そうだ私が忘れていた英語のテスト範囲を教えてもらっていたことに気がついた。
「ううん。大丈夫」
そう答えたが顔色が悪い……と頬に手を当てられた。一気に顔に熱が集まるのを感じて少し恥ずかしくて俯くと
「蛍、顔真っ赤」
と笑って揶揄ってくる。
一馬は昔からそうやって私のことを揶揄ってきたりする。そして彼女のフリをしている私を誰よりも大事にしてくれる……と思う。そんな優しさにいつも甘えさせてもらっているけど、でもそろそろ一馬から離れないといけないのかもしれないと思いはじめた。だって一馬は怪我をさせた責任を感じてただ私と一緒にいてくれてるだけなのだから。
学校に着くと友達がきてくれた。でも記憶が曖昧な私はいつもその場を取り繕って学校生活を過ごしてる。昨日の話を一言一句覚えているわけじゃない。だからたまにミスを犯す時もある。今日もそうだった。
「由奈、今日のリップ綺麗じゃん。似合ってる。どこで買ったの?」
そう言った私に
「全くそのセリフ昨日も聞いたよ。蛍なんか変だよ。もう一回、病院行ってちゃんと頭ん中見てもらったら?」
そんな辛辣なセリフも笑い飛ばせるようになった。由奈が私を嫌いなのはわかっている。それでも彼女がいつも私のそばにいるのは……
「佐渡くんかわいそう。蛍がちゃんとしないと嫌われるよ。ねぇ~沢渡くん」
彼女は一馬が好きなんだろう。それも中学校の時から……だから塾に通って一馬が受験をするこの進学校の高校を受験したことは覚えている。でも由奈だけには、由奈以外も嫌なんだけど、絶対にとられたくないと私の中で独占欲が湧いてくる。彼女じゃないけど彼女のフリをしている私だけど、いつも一緒にいる私たちを誰もがカップルだと認識してるから。だから私は今を必死に生きるしかない。みんなに嘘をついてでも……でもやはり限界があると最近気づかされた。
「小野寺、ちょっといいか?進路指導室まで来てくれ」
HR(ホームルーム)が終わり担任の宮下先生から呼び出しがかかってしまった。本当は1時限目に古典の授業があったのだが担当の野山先生がお休みで急遽自習になってみんなで喜んでいたところだった。先生の呼び出しはきっとあの事だろう。
「蛍、大丈夫か?」
私が一瞬暗い顔をしていたのだろう、すぐに見抜いて声をかけてくれるのはやっぱり一馬だった。
「大丈夫。きっと昨日病院に行ったじゃない?そのことで報告してほしいみたいなの忘れてた。じゃあ行ってくるね」
なるべく明るく声をかけて何もなかったように嘘をついて私は先生が待つ進路指導室に足を進めた。これから先生に言われることは覚悟している。でもあと少しだけでいいから一緒にいたかった。私は自分を鼓舞するように手を握りしめた。
「失礼します」
4人掛けのテーブルが2つ並んでいる1つの席に先生は座って待っていた。テーブルの上には分厚いファイルが2冊がおいてあった。
「体の具合はどうだ?」
核心には触れずに聞いてくれるのがこの先生のいいところだ。去年、私たちが入学した時に新任の先生としてやってきた。今年からクラス担任になって歳が近いからか私たちの気持ちを理解してくれているいい先生だ。
「先生、聞きたいことはそうじゃないでしょ?はっきり言ってくれて構いません。覚悟してきましたから」
先生は大きなため息を一つこぼしてからテーブルの上にあった分厚いファイルをめくりはじめた。距離があるからその中身は見えなかったけど先生はめくっていた手を止めて、私に見えるようにそのファイルを見せてくれた。
そう言われてボーっとしていたことに気がついた。そうだ私が忘れていた英語のテスト範囲を教えてもらっていたことに気がついた。
「ううん。大丈夫」
そう答えたが顔色が悪い……と頬に手を当てられた。一気に顔に熱が集まるのを感じて少し恥ずかしくて俯くと
「蛍、顔真っ赤」
と笑って揶揄ってくる。
一馬は昔からそうやって私のことを揶揄ってきたりする。そして彼女のフリをしている私を誰よりも大事にしてくれる……と思う。そんな優しさにいつも甘えさせてもらっているけど、でもそろそろ一馬から離れないといけないのかもしれないと思いはじめた。だって一馬は怪我をさせた責任を感じてただ私と一緒にいてくれてるだけなのだから。
学校に着くと友達がきてくれた。でも記憶が曖昧な私はいつもその場を取り繕って学校生活を過ごしてる。昨日の話を一言一句覚えているわけじゃない。だからたまにミスを犯す時もある。今日もそうだった。
「由奈、今日のリップ綺麗じゃん。似合ってる。どこで買ったの?」
そう言った私に
「全くそのセリフ昨日も聞いたよ。蛍なんか変だよ。もう一回、病院行ってちゃんと頭ん中見てもらったら?」
そんな辛辣なセリフも笑い飛ばせるようになった。由奈が私を嫌いなのはわかっている。それでも彼女がいつも私のそばにいるのは……
「佐渡くんかわいそう。蛍がちゃんとしないと嫌われるよ。ねぇ~沢渡くん」
彼女は一馬が好きなんだろう。それも中学校の時から……だから塾に通って一馬が受験をするこの進学校の高校を受験したことは覚えている。でも由奈だけには、由奈以外も嫌なんだけど、絶対にとられたくないと私の中で独占欲が湧いてくる。彼女じゃないけど彼女のフリをしている私だけど、いつも一緒にいる私たちを誰もがカップルだと認識してるから。だから私は今を必死に生きるしかない。みんなに嘘をついてでも……でもやはり限界があると最近気づかされた。
「小野寺、ちょっといいか?進路指導室まで来てくれ」
HR(ホームルーム)が終わり担任の宮下先生から呼び出しがかかってしまった。本当は1時限目に古典の授業があったのだが担当の野山先生がお休みで急遽自習になってみんなで喜んでいたところだった。先生の呼び出しはきっとあの事だろう。
「蛍、大丈夫か?」
私が一瞬暗い顔をしていたのだろう、すぐに見抜いて声をかけてくれるのはやっぱり一馬だった。
「大丈夫。きっと昨日病院に行ったじゃない?そのことで報告してほしいみたいなの忘れてた。じゃあ行ってくるね」
なるべく明るく声をかけて何もなかったように嘘をついて私は先生が待つ進路指導室に足を進めた。これから先生に言われることは覚悟している。でもあと少しだけでいいから一緒にいたかった。私は自分を鼓舞するように手を握りしめた。
「失礼します」
4人掛けのテーブルが2つ並んでいる1つの席に先生は座って待っていた。テーブルの上には分厚いファイルが2冊がおいてあった。
「体の具合はどうだ?」
核心には触れずに聞いてくれるのがこの先生のいいところだ。去年、私たちが入学した時に新任の先生としてやってきた。今年からクラス担任になって歳が近いからか私たちの気持ちを理解してくれているいい先生だ。
「先生、聞きたいことはそうじゃないでしょ?はっきり言ってくれて構いません。覚悟してきましたから」
先生は大きなため息を一つこぼしてからテーブルの上にあった分厚いファイルをめくりはじめた。距離があるからその中身は見えなかったけど先生はめくっていた手を止めて、私に見えるようにそのファイルを見せてくれた。

